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昼下がりの詰所
紺炉に葵を呼んで来るように言われ
薄日の指す2階の廊下を歩く紅丸。

チッ。自分で行けばいいのに…

目的地に着き、襖に手をかけたところで止める。
この前、無断で入ろうとして
こっぴどく怒られた事を思い出し、一応声を変える。


「入るぞ」


が、返事がない。
紅丸はため息を吐き、部屋に入った。
葵はこちらに背を向け、肩を規則正しいく上下させていた。


「おい、起きろ…」


と、手を伸ばした瞬間、視界が反転する。
そして、形のいい唇が擦れた音を出す。


『…だれ』


眼前には天井を背に、自分に馬乗りなる葵。
垂れ下がる髪で、顔がよく見えない。

顔が見たい

素直にそう思い、顔にかかる髪を払おうと手を伸ばす。
しかし、虚しくも畳に押し付けられる。


「葵…。俺だ」

『……。なんだ…若か』


ここで、うつろな目にいつもの色が戻る。


「何だじゃねぇ。降りろ、重い」

『あっ、ごめん』


馬乗りになっていた葵が慌てて上か退く。
身体を起こせば、正座で隣に座る葵。



『で、何かご用で?』

「紺炉がお前に用があるって」

『お兄が?何か言ってた?』

「だた呼んで来いって」

『そう…』


しかし、葵には思い当たる節がなく頭を悩ませる。
淡い髪がまた白い肌に影を落とす。
また払いのけられる事を思うと
一瞬手を伸ばすことを躊躇った。

が、今度は容易く触れることができた。
やっと、空と目が合う。


『なに?若』

「…なんでもねぇ」

『そう?まぁ、とりあえずお兄の所、行ってみる。起こしてくれて、ありがとうね』


と、名残惜しくも
淡い髪が指の間をすり抜けていった。
要件の済んだ紅丸も立ち上がろうと
畳に手をついた時、手首に違和感を覚える。
視線を手首にやれば、赤黒く鬱血している。

筋までイカれてるな…

2、3度手首を擦り、昔の事を思い起こす。
6年前、葵は軍へ行くといった。
当然、皆が反対した。
しかし、葵は折れなかった。

寧ろ


「止めたいなら力づくでこい」


と、豪語した。
が、結局誰も止めることができなった。
その結果が、鬱血した手首(これ) なのだ。


「あの時、俺が…」


強ければ

力があれば


いつの日に、掴み損ねた手を思い起こす。
そして、紅丸は誰もいない部屋に独り言を溢した。







――――――――
コメディが書かきたい…

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たんぱく質(プロフ) - なーちゃんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるだけで、励みになります。できるだけ早くお届けできるよう頑張っていきます。 (2020年6月3日 21時) (レス) id: aad2ad7f17 (このIDを非表示/違反報告)
なーちゃん - 紅丸大隊長、大好きなんです!書いてくれてありがとうございます!続き待ってます! (2020年6月2日 8時) (レス) id: 7840b2b58c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たんぱく質 | 作成日時:2020年5月24日 19時

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