118話 ページ24
『．．．』
”会いたかったっ”
”ごめんな、すぐに救けてやれなくて”
”可愛いなぁ”
”頑張ったな”
”A”
『．．．っ』
夜の帳が降り、街中の光が映える時間
Aは一人事務所の屋上にいた
見覚えのある赤いパーカーを羽織って、屋上の縁に腰を下ろしている
パーカーを握り締め、身を縮める姿はまるで何かを耐えているようだ
『．．．くお、ん．．．』
口元に手を当てて、搾り出すようにして漏れた声は酷く切なげだ
「くおん、って誰だ．．．？」
『！．．．轟．．．？』
自分しかいなかったはずの場所に、A以外の声が響く
慌てて振り返ると扉を開けてこちらに歩み寄ってくる轟の姿があった
「そんなとこ座ってると危ねえぞ」
そう言って伸ばされた手をそっと取った
緩い力で手を引かれる
『．．．』
向かい合うようにして立ったまま、何も会話はない
ただ、繋がれた手はそのままに
「．．．なあ、くおんって誰だ？」
『え、っと．．．』
「俺には言えないか．．．？｣
覗き込むようにして問われ、思わずびくりと肩が揺れた
有無を言わさないような轟の視線に、Aは素直に口を開いた
USJでの事、保須での事を．．．
聞き終わった轟はそうか、の一言以外何も言わなかった
この重い沈黙にも、数日間で慣れてしまった気がする
『．．．あの、とどろ、きぃっ！？』
「．．．」
Aが奇声をあげるのも仕方がないだろう
何も話さなかった轟が突然Aの腰を引き寄せ抱きしめたのだから
『え！な、なに！？どしたの急に！』
Aが必死に轟を押し返すも、まったく離れない
「なあ」
『ヘァッ！？』
Aの耳元で轟の掠れた声が響く
「そいつの事、好きなのか？」
『．．．え？』
思わず入れていた力が抜けた
「これも、その紅音って奴のなんだろっ？」
『ちょっ！ど、どうしたの．．．？
なんか変だよ．．．』
轟はAが羽織るパーカーを取ろうとするも、Aの手に止められる
「．．．お前が．．．呼ぶからだろ」
『？』
「お前がそいつの名前を呼ぶからだろっ！」
『っ！？』
滅多に大声を出さない轟に、Aは怯えたように肩を竦ませる
「ぁ．．．」
そんなAを見て轟は冷静さを取り戻したようだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
SHINKAI(プロフ) - 弁財天ちゃんさん» こんばんはです弁財天ちゃん！コメント励みになります。ありがとうございます！頑張って更新していくので、続きをお楽しみにしていてください！ (2019年2月4日 1時) (
レス) id: 1540b5aafe (このIDを非表示/違反報告)
弁財天ちゃん - SHINKAIさん» SHINKAIさんこんばんは弁財天ちゃんです！！夜分遅くでもお仕事ご苦労様です(*^_^*)先程の内容を読ませて頂いたところヒロインは焦凍の告白に何故か答えられない要素がありますが一体どうしてなのか気になりますね(-""-;)また今後の内容をお待ちしてます！！ (2019年2月3日 20時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
弁財天ちゃん - SHINKAIさんおはようございます弁財天ちゃんと言います不束な点がございますがよろしくお願いいたします！！最近第三段製作おめでとうございます(*^_^*)！！此れからも忙しくなりますが影ながら応援してますのでまたの内容をお待ちしてます＼(^_^)／ (2019年1月17日 7時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
SHINKAI(プロフ) - いまづきさん» ありがとうございます！頑張って更新していきます。 (2019年1月6日 23時) (レス) id: 1540b5aafe (このIDを非表示/違反報告)
いまづき(プロフ) - 面白かったです！再新頑張ってくださいp(^-^)q (2019年1月6日 20時) (レス) id: 14b35c0538 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：SHINKAI | 作成日時：2019年1月6日 4時
