第153話 ページ9
「Aその格好でいいのか？」
『ﾜｳ』
Aはオオカミの姿、と言っても少し体を小さく調節しているようで、せいぜい大型犬だ
パーカーを被ったキルアの横を雨に濡れながら歩く
念字で“この姿の方が何かあった時すぐに反応できる“とのことだ
降りしきる雨の中、やっと目的地に着いたがキルアの様子がおかしい
「建物の数が増えてる」
『！ “クラピカに連絡“ 』
「ああ」
『(死体を作った能力者の仕業か
トラップの可能性もある
迂闊には近寄れないな)』
周りを見て回るが、迂闊には動き回れない
雨のせいで嗅覚も少し鈍くなっている
『(この建物が念で出来ているなら、円の役割を担っている可能性が高い
私の円が引っかかるから変に使えないし．．．
でも、匂いが僅かにしてる
まだこの建物群のどこかにいる
クロロと、一緒にいた男女
あと数人知らない匂い)』
どうやらクラピカの指示でもう一度最初の監視点に戻れとのことだった
連絡を待つようだ
数分後、キルアの携帯が震える
「もしもし」
“あ、キルアくん？“
「ああ、あんたは？」
“クラピカの仕事仲間
左の方を見てくれる？“
100mは離れているであろう建物に、電話相手らしき影
“携帯切ってすっごい小声で私に何か命令してみて“
『．．．！』
右手上げて、というキルアの指示
聴覚が発達した獣でも聞き取れないであろう声を、相手はしっかりと聞き取って見せたのだ
「すっげえな
Aより耳いいんじゃね？」
『 “嗅覚なら私が上だし“ 』
「雨音で内容は聞き取りづらいけど確かにあの敷地内で話してる
足音からみて5〜6人、女も交ざってる
廃墟から出て反対側に向かってるわね」
「すげえな
俺もゴンも鍛えてる方だけど全然聞こえねえ」
「そういう能力だから」
バレないように離れた場所から小走りで彼らを追う
もちろんAはオオカミのままだ
「クラピカもだいぶ切羽詰まってるみたいね
私にまで協力を求めるなんて」
「え？」
「あの人全部自分でやりたがるでしょ？」
「あ．．．ああ、確かにね」
センリツの言葉にAが頷く
「あなた、まさか殺し屋さん？」
なんとセンリツはキルアの足音から職業を見抜いてしまった
元ではあるが
どうやら足音がほとんどしないかららしい
「ねえ、あなたがAちゃんよね？」
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作者名：SHINKAI | 作成日時：2022年9月9日 19時
