エーデルワイスを君に2【HUNTER×HUNTER】 (ページ35)

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第80話ページ35

「初めまして
　君がネテロが言っていた子だね？」

『はい、A＝エーデルと申します』

「Aちゃんか
　君みたいな可愛らしい子に用心棒だなんてさせて申し訳ないね」

『いえ、そんな』

物腰の柔らかな老人の名前はレオン＝ウォーカー
今回の依頼主だ

「パーティーは明日の夜だ
　今日は部屋でゆっくりするといい」

レオンは内ポケットから銀の懐中時計を取り出し時間を確認しながらそう言った

『．．．』

「何もないといいが．．．
　タチの悪い盗賊の話もよく聞くからね

　私も君も、今のうちに休んでおこう」

『あ、はい』

「どうかしたかい？」

自身の手元を見るAが気になったのだろうレオンが問う

『あ．．．素敵な懐中時計ですね』

「ああ、これか．．．

　恋人からの、贈り物だよ」

『恋、人．．．？』

レオンは見るからに60代だ
そんな彼が、妻ではなく恋人と言ったのだ

「．．．」

レオンは懐中時計をAに手渡す
失礼します、と一言言ってから時計を手に取り蓋を開く

『．．．！』

時計の蓋にはレオンの家の家紋であるライオンが掘られている
中を開けると、盤には小さな宝石がそれぞれの数字のところで輝いていた

決して派手すぎず、とても繊細なデザインのそれはとても価値のあるものなのだろう
12、3、6、9のところはルビーが埋め込まれている

そして盤の反対側
蓋の裏には一枚の写真

プラチナブロンの髪をゆるく巻いた女性と、同年代であろう男性が笑顔で並んで写っていた

『こちらの男性は．．．レオンさんですか？』

「ああ
　もう40年も前だよ

　隣の女性が、私の恋人さ」

どうやら2人は恋人同士で、結婚も決まっていたらしい
しかし、婚姻を前にして彼女は事故で亡くなった

この懐中時計は時計職人だった彼女がレオンさんにプレゼントしたものらしい

レオンさんは彼女のことをずっと想い続け、今も独身のままらしい。

『そうだったんですね』

「恥ずかしい話さ
　いつまでも彼女を忘れらない、馬鹿な男だろう」

『そんなことありません』

「え？」

『とても素敵です

　レオンさんが彼女をどれだけ愛しているのか、痛いほど伝わります
　大事なんですね
　この懐中時計も、彼女さんも』

レオンはポカン、とした顔をしたが
懐中時計を握りしめ、笑顔を浮かべる

「ああ、とても．．．」