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第79話 ページ34

「本当にありがとうございました!!」


『いえいえ
 怪我もなくてよかったですよ』


母親はもう一度礼を言ってから、少年を連れて再度賑やかな声に包まれた街の中に消えていった。

Aはわずかに汚れた服を払い、前を向いた時。


『!』


「これ、使って」


『え...?』


目の前に突然差し出された真っ白なハンカチ
その手の先を辿ると、笑顔を浮かべる黒髪の青年が立っていた

黒のワイシャツに、額に巻いた包帯


『(え、怪しさ満点のイケメンがきた)』


何もできずに静止していると、イケメンは差し出したハンカチをAの頬にあてがった


『っ!』


ピリ、とした痛みとされたことへの驚きで思わず後ろに仰反る
イケメンは驚いたような表情をすると、困ったように笑う


「驚かせてごめん
 頬を怪我してたから」


その言葉に、ほっぺに手を這わすと確かに僅かに血がついた


「さっき見てたよ
 あっという間に男の子を助けてたよね

 すごいね、君」


『どうも...』


イケメンはニコリと笑うと血のついたAの手と頬をハンカチで拭った
今度はされるがままのA


『...』


じっと、相手を見つめる


「君、名前は?

 俺はクロロ
 よろしく」


差し出された手に目を向ける


『...エーデル』


「エーデル?
 変わった名前だね」


『ファミリーネームなので』


「!...はは、そうか
 面白いね

 さっき、急いでたみたいだけど
 何か予定が?」


『あ゛!』


「?」


慌ててスマホを取り出し時間を確認すると、時間は15:30
約束の時間まであと1時間半しかない


『やばいまだ服買ってないのに...』


「服?
 ショッピングかい?」


『...仕事ですよ

 ハンカチ、汚してすみませんでした
 私急いでるので、これで失礼します』


「(仕事、ね)

 気にしないでいいさ」


急いで駆け出そうとしたAの背中に、イケメンもといクロロが
あ、と思い出したように声をかけた

Aは思わず立ち止まり肩越しに彼を振り返る


「次会ったときは
 名前、教えてくれると嬉しいな」


『...さようなら』


遠回しに会うことはない、と告げAは人混みに消えていった

クロロは彼女が消えていった方をじっと見つめ、口元に笑みを一つ浮かべとある言葉を呟いた
















「まさかこんなところで会えるとはな」

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作者名:SHINKAI | 作成日時:2022年8月24日 22時

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