エーデルワイスを君に2【HUNTER×HUNTER】 (ページ31)

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第76話ページ31

『．．．』

「彼らは自らが愛した世界を見守っていた
　この世界に生きる命も、全て．．．

　そんな彼らを、人々は神と呼び
　幸運を招いてくれると信じておった

　そして、道を指し示してくれるとも」

『道？』

「うむ

　旅人が道に迷わぬように
　死者が正しく天に召されるように
　目指すべき道に灯りを灯してくれるように

　彼らが人の道を照らしてくれると

　
　様々な名で呼ばれておった
　神様や、先導者様．．．天帝や創造主と呼ぶものもおったそうじゃ

　真の姿を知るものは獣の王、とも」

『．．．』

Aは何も言えなかった
ただただネテロの話に耳を傾けることしかできなかったのだ

「A」

そんな彼女に、ネテロは優しく声をかけた

『．．．はい．．．』

「お主、先祖返りを知っとるか？」

『？．．．知識としては、一応』

“先祖返り“
何代も前の先祖が持っていた遺伝的形質が、突然子孫に現れることである。

「ふむ、なら話は早い

　A、お前さんが先に話した獣の、先祖返りじゃよ」

『．．．わたし、が．．．？』

「うむ

　獣たちの血は限りなく薄まり
　他の生物と交わりながら姿を変えた

　獣は歴史から消えたと思われた

　何百年もの間、その血を継ぐものは現れなかった

　しかし
　数十年前、お前さんが産まれた

　いつ、どこでなどの詳しい話はわしにも分からん

　じゃがお主は間違いなく太古の歴史に実在した王の血を継ぎ産まれてきた
　姿も、力も、念能力も全て
　その血によるものじゃ」

『．．．！』

ざわりと、心の臓を何かに撫でられた気がした。

私が知らない私の存在が、ここにいるとでも言うように
自らの存在を主張するように蠢く

息苦しさを感じて、初めてそこで呼吸を止めていたことに気づいた

一度肩の力を抜いて、ゆっくりと深呼吸をする

「．．．」

そんな姿を、ネテロはじっと見つめていた

『．．．ﾌｩー．．．そ、っか．．．

　私の体には、ちゃんと家族の血が流れてるんだね』

「！」

『1人だと思ってた
　でもそんなことなかったんだ

　私にも、家族がいた．．．』

Aの予想外の言葉に、ネテロは大きく目を見開く

そして、心底安心したように
幸せそうに笑うAを見て、口元に笑みを浮かべる。

『師匠』

「ん？」