検索窓
今日:5 hit、昨日:15 hit、合計:5,511 hit

34話 ページ37

背後では爆発音が絶え間なく響き
その都度建物が倒壊していくのがわかる


轟々と燃え盛る炎に
夏の茹だるような暑さが相まって汗が滝のように流れる



なのに
体の芯は徐々に冷えていくのがわかった



アスファルトを少しずつ赤く染める液体が僕の腕を伝う


彼を支える腕はしっかりと重みを感じているはずなのに
何故かその重みが消えていくような感覚に陥る


ドクドクと早鐘を打つ僕の心臓
鼓動で体が揺れているんじゃないかと思った


なのに彼の音は僕の音に反比例するように小さくなっていく



小麦色に焼けた彼の肌が少しずつ
しかし確実に色を失っていく



重苦しそうに薄っすらと開いた瞳が悲しげに揺れて
形のいい唇からは苦しそうな声が漏れる



真っ赤に染まった腕が上げられ
僕の襟を力強く掴んだ


どこにそんな力が残っているんだと聞きたくなるほどの力で引き寄せられる



真っ黒な瞳が一際強い光を灯すのを見た


凛とした声がまるでこれが最後かのような獣の遠吠えのように聞こえた



たった一言


僕にそれだけ言い残して


彼は逝ってしまった



安らかに、なんて


到底言えないような悔しげな表情を残して





「降谷、お前にしか 頼めない...っ

 真白という苗字の
 少女を、探してくれ...っ」





____________________________


「夢、か...」


懐かしい夢を見た

あの人との最後の会話だった


「真白...」


頼む、と
最後にやるせない表情で彼は言った

それを最後に彼は僕の腕の中で息を引き取った


「...貴方に憧れて、尽くしてきた部下に
 最後に言うことが人探しなんて

 ほんっといい性格してますよ...」


でも
貴方のあんなに必死な顔は初めて見ましたよ


「僕が必ず、見つけて見せますから」


だから、もう少し待っていてください


桜羽さん...


安室side終了

35話 探偵たちの夜想曲→←33話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.0/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
12人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:SHINKAI | 作成日時:2022年4月6日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。