29話 白と緋 ページ32
『顔に火傷を負った男を米花百貨店で見かけて
その男の顔が殉職したFBI捜査官の赤井秀一にそっくりだった
...いつから分裂できるようになったの?』
「おもしろい冗談だな」
『......』
私は今、幼馴染の一人である工藤新一の家に訪れている
そして目の前に座っているのは眼鏡をかけた糸目の男性
「そのうちボウヤから聞くことになるだろうが、先に知らせておこうと思ってな」
『それはご親切にどうも』
彼の名前は沖矢昴
東都大学大学院工学部に在籍する大学院生である
まあ、これは仮の姿であり
彼の正体は先の話に出てきた死んだ”はず”のFBI捜査官
かつて黒の組織に潜入していたこともある凄腕の狙撃手
赤井 秀一である
『変装だったんでしょ?その男
心当たりは?』
「ああ、それならもう見当はついている」
この人は組織を欺くためにコナンと結託し、死を偽装し今はこの家で暮らしている
彼の今の状況を知る人は極わずかで、私もその一人だ
なぜ知っているのかというと...
まあ、察しのとおりコナンに諸々の手伝いをさせられたからである
他にも理由はあるのだが、それはまた後にしよう
「誰だと思う?」
『はあ?』
「その男だ
わかるか?」
『...(わかるわけねーだろ...)』
まだいまいち見慣れない顔で薄っすらと笑みを浮かべるこの男は、私が何か答えない限り教えないつもりだろう
『...まあ、十中八九組織の人間だろうね』
「ほー...
なぜそう思う?」
『組織の連中は亡霊を今度こそ仕留めるつもりだったんでしょ?
でもそうしなかった
出来なかった...?いや、違う
する必要がなかったからだ』
「...」
『仮にその男が赤井秀一本人でなくとも
あまりにも似すぎた顔の相手をその場で野放しにはしないはず
監視をつけるか捕まえるかするでしょ
こちら側の人間の変装なら、捕えれば大きなメリットだ
でもしなかった
殺したり捕えることが相手にとってデメリットもしくわ無駄足になることが分かったから』
「つまり、奴は組織の人間」
『幹部レベルの奴の独断専行
ってところじゃないかな』
「さすがだな
お前もボウヤのように探偵を名乗ってみるのもいいんじゃないか?」
『冗談でしょ?
興味ないな』
「フッ、そうか
その男のコードネームを教えておく
コードネームは...」
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作者名:SHINKAI | 作成日時:2022年4月6日 16時