第31話 ページ33
「．．．火、通さなくていいのかよ」
『ん？
．．．うん、いつもこれだから』
「あ、そ．．．」
焼いた鹿肉を食べるキルアの横で
Aは初日と同じように生の肉を千切るように食べている。
相変わらず顔を鮮血で汚しながら食事をする姿は、まさに野生の動物である。
そんな彼女の姿をキルアは興味深そうに見つめる。
「なんかお前、ミケみてー．．．」
『ミケ？』
「うちで飼ってる番犬
あいつもお前みたいに肉食うからさ
まあ、ミケが食ってるのは人だけど」
『ふーん
．．．私もあるよ、食べたこと』
「は？」
ブチ、と肉が切れる音がした
『人
食べたことあるよ』
「．．．まじ？」
『うん
でもあんまり美味しくないけどね』
なんの躊躇もなく発せられた言葉に、キルアは頭を悩ませた。
「(これ、多分こいつにとっては普通のことなんだろうなぁ)
．．．A
それ、あんまり他の奴らの前では言うなよ？」
『うん、わかってるよ』
「．．．(ほんとかよ)」
あまりにも自然に自分に話しておきながら、本当に理解しているのか？
と多少の疑問は残るが、おそらくこれ以上言っても同じだろうとキルアはそれ以上は何も言わなかった。
『？』
その代わりに、キルアはAの横に座り血まみれの口を無理やり開く。
Aはされるがままで大人しく口を開けている。
「すげー牙」
そう言うキルアの目にはAの巨大な犬歯が写っていた。
およそ普通の人間のものではない
確かに獣のような牙が4本。本来犬歯がある場所に生えている。
心なしか他の歯も大きく尖っているように見える。
「．．．」
おそらく、自分よりも強い相手
そんな相手が自分に身を委ねてされるがままにされている。
そんな状況に、キルアはなんとも言えない感情に襲われた。
『？』
背中から、脳天へ走る衝動のようなものに気づき
思わずごくりと喉が鳴る。
Aの口内に入ったままの指から生ぬるい体温が伝ってよくわからない汗が頬を伝った。
右の親指で歯をなぞり、左の親指を内頬に滑らす。
『っ』
わずかに跳ねた肩。
口内から抜いた指に、血とは別の何かが絡んで
水の糸を作る。
「．．．」
ごく自然に
それを自分の舌に滑らしたキルア
Aはその仕草をジッと目で追うことしかできなかった。
「．．．甘ぇ」
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SHINKAI(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます！そう言って頂けるとすごく嬉しいです！これからも作品をよろしくお願いします！ (2022年8月31日 0時) (
レス) id: 9829dd467f (このIDを非表示/違反報告)
蒼 - HUNTER×HUNTERの世界観にあった文章でサクサク読み進めることが出来ました。とても面白かったです！ (2022年8月30日 23時) (レス) @page48 id: 1c5f686e4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SHINKAI | 作成日時：2022年2月11日 4時
