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契約をしたら必ずこういう付属品がついてくるのだろうか。
それを忌々しく眺める者は、紅い瞳のまま私に論するように言った。
「聞け、本契約は主側に負担がかかる。
一つは感覚の共有。細胞の動きから視覚や触覚まで、好きなときに契約相手に繋がれる。
流石に乗っ取りは出来ないから安心しろ」
私はあんぐりと口を開けているかもしれない。
それを出来ずに野垂れ死にそうになっているかもしれない。
どちらにせよ動揺は大きかった。
ハンモックに乗って、友人に勢いよく揺らされている。それ程のものだ。
働かない思考とともに、揺れ動く精神は非弱なものだ。
この事実を目の当たりにするということが、この場所で心を清めるということなのか。
他者の意見を鵜呑みにし、契約したことを後悔し始めるぐらいには、その者の説得力というか改変力は強いものであった。
「お前は契約の基本のそれさえも知らない。
契りは人間でいう離婚と同じく、同方の許可があり破綻されるものである。
…見る限り彼奴はそれに同意せぇへんやろ」
苛ついているのか、何処か口調に威圧感と支配感が見える。
すると、右耳に冷たいものが触れた。者の手だろうか。
それから場所を確かめるようにコツコツと長い爪をたてられる。
それからシュッと何かを塗りたくられたような、いかにも貼り付いていますよと大っぴらに示されている感覚を覚える。
その者を見れば、チロリと舌で指先についたものを舐めていた。
「これでいいか…
仮契約、予約みたいなもんだ。ここに何かあった時は俺に通じる。
犬で言うマーキング、此処は使うなという主張だ。
どうせお前のことだ、拒絶なんて選択肢はない」
その者はもう一度確認するように、右耳の耳朶辺りを触れた。
それから溜め息をつき、立ち上がる。
それを視線で追った私を最後に振り返った。
その瞳の色は碧。
「契りを見届ける役目の俺がするわけにもいかんだろ？
彼奴等にはバレるし、、、いや、海と陸の境界線のここじゃあ、これだけでもバレるか…
私はグルッペン、君に全てを捧げた者とでも思ってくれ。
主人の健闘を祈る。また会えるように。」
きっと柄にもない行動なのだろう。
グルッペンはぎこちなく両手を合わせ、脚を閉じ、神に祈るように佇む。
それからバッと手を離し、神に用済みだというように仁王立ちになり、身体を私から海へと飜えした。
その瞳は灰色か黒。
それが終わりをつげたのか、私は自然と目を閉じていた。
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