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Nosaid
「いいん？」
「…何が」
「アハハ。めっちゃ苛ついとんなぁ、怖い怖い」
「なら来んな」
「ん〜、無理無理。めっちゃおもろいもん」
白に鈍い朱が混じった軍服を着こなす者は、頭部に鬼の角とも言えるものを生やし、苛々と桜の木の下で風がすぎるのを待っていた。
刀を地に差し、それを抱えるように丸まって座っている姿は、近づくなと牽制しているようでもあり、誰かを待ち惚けしているようにもとれた。
その状況に水を差したのはその景色に泥を塗るような風貌の者だった。
死んだような瞳に左半身は泥が覆いかぶさっている。
猫背な背と青白い肌からは、チラチラと光る黄金が見えた。
泥を草に滴らせながらも、草原の上で立つそれは口元に袖を当てケラケラ笑った。
キラキラと金に輝く指を機械的に折っていく。
「会えなくて悲しいんか？、、泥人形、忠犬に闇医者、堕天使といくと、、先が思いやられるな」
「最初に泥を塗ったのはお前だろ」
「んハッ、主と線が繋がったんだわ
こんな泥にさえ感情を芽生えさせた罪よ、僕を造ったからには離さへんで」
泥から覗いた瞳はランランと金を放ち、不釣り合いさを更に生み立たせた。
自身の泥の身体に触れ、生きていることに怨みがましく泥を祓ったかと思えば、瞳が直ぐに隠れた。
俯いたままの鬼の者は、興味が無さげに刀を赤い爪が伸びに伸びた指で撫でる。
自分は会っていいのか、その権利はあるのか。彼女の足枷にならないか、今の自分を否定しないか。
最後にくるものはやはり自身の否定に対する恐れ。
彼女に自分というものを否定されれば、最早存在価値なんてない。
だが、彼女は多くの者に情を分け、包み込んだ。
彼女のすることに間違いはないだろう、ただ役に立つとは言い辛い自分というものがいつか、いつか
必要のないものへと…
重い溜め息がつかれ、冬でもないのに風へと白いものが浮かんでいく。
駄目だな、こんなにも彼女がいると分かれば、感情が湧き上がってきてしまう。
鬼の者は気持ちを抑え込むように刀を強く握りしめた。
「ふぅ、どうにか、、しないと、」
「…あ、そろそろ経営時間やわ。行くで」
チラリと空を見上げた泥の者は、直ぐに風貌を変えた。
泥が跡形もなく消え、年季が入ったスーツを身に纏う。
青白い顔も化粧を塗ったかのように、明るみを持ち、唯一変わっていないのは死んだような瞳だけだった。
泥が落ちていたであろう地面を見れば、地は腐り果て緑から一変していた。
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