3・himself ページ16
夜なのに凄い暗いわけじゃない。
梅の花が淡い灯りとなって、我が家の豆電球のような明るさを…
「何時まで景色に溺れてるん？あ〜あ、アルジはほんまに俺に興味がないんやね。」
大袈裟なように言い表し、それにさえ悲しみを含ませて。
穏やかな声があまりにも悲痛をこめるから、キュッと目が冴えてしまった。
ガシリと宙に伸ばした腕に力がこめられ、強く花の布団から引き出される。
「う、わぁっ」
「…アルジは俺を嫌ったんに、少し、ほんの少し光を残すから。またこうして繋げたくなるんよ」
強く強く抱きしめられ、痛みを感じる。
神聖的な衣服を纏っている者は、鮮やかな茶髪を靡かせ、私に顔を見せようとはしない。
天使とは真逆に、者の背に生える翼は根本から徐々に黒く染まり始めた。
翼に元気はなく、ぺたりと花の上に頭を垂れている。
その者は異様に私に執着がある気がする。
いや、でもこんな超次元的な者と私はあっていないし、貧相なパチンコ屋のアルバイトがこんなところに来るわけがない。
…謎が深いなぁ。
何処か他人事になりつつ、自己紹介をしてもらいたいと体を動かす。
離してはくれないようだ。
「えと、、君のお名前は？」
「……オスマン、ただのオスマン」
そう言い放ち、私を離した。
そして、ボスリと梅の花の布団にオスマンは落ちる。
梅の花が勢いに空に舞えば、彼の美しい羽根もバラバラと花の上に落ちる。
羽根が重いのか、花が軽いのか、その重力差に驚く。
オスマンの羽根が落ち過ぎていないか不安になり、彼の翼に恐る恐る触れる。
温かい、熱い。
羽毛ってこんなに熱いんだっけ。
沸騰しているのか疑う程の熱さに、手を引っ込める気持ちより心配が勝った。
「…熱いやろ」
「、、オスマン、痛くない？」
「ん、、、自分に触れられるのはいつぶりなんかな」
はぁ、と溜め息をつき、オスマンは顔を隠すように腕を回した。
彼の重さで沈んだ花は死んだように光を出さず、枯れていく。
それが綺麗だと感じる私は、オスマンに結構魅入られているなと苦笑いをする。
正座でこの後をボケッと想像すれば、色んな疑問が出てきてどうしようもない。
しかし、広いな。
オスマンは私の心を汲み取ったように、話し始めた。
「此処は俺の幻。堕ちた俺に、哀れみと一緒に神が消さなかったもの。
大事なもんをことごとく潰した挙げ句、最後は夢を見れなんて、、憎くて憎くてしょうがないわぁ」
忌々しげにオスマンは目を開いた。
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