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男は私の肩を押し寝かせると、替えの服と氷袋を持ってきて私の頭にのせた。
横の椅子でブラブラ座りながら、私の額に氷を当てて続ける男は存外暇そうに見えた。
医者としてはゆとりを感じる。
いや、助けてもらった中このような考えを持つのは失礼なのだが。
私が自分を見ていることに気づいたのか、男は此方に向き直った。
「…あ〜、俺はしんぺい神。君にはそう呼んでほしい。
君の家に不届き者がいただろ？其奴が慌てて俺に君を診てほしいって言うのさ。
まぁ、大したことではなかったし安心していいよ」
「ご、ご迷惑をおかけいたしましたっ！」
「いいっていいって、俺はまだ君の役に立てれたみたいだし充分だよ」
咄嗟に謝れば、ふんわりと優しい声が宙を舞う。
顔は見えないが、とてもマイペースでフレンドリーな方なんだろう。
謙遜やお世辞を嫌い、最初から入らせないように罠を張るあたりそういうのに強い苦手意識もあるのかなと。
不届き者とは不思議な表現ではあったが、我が家の居候コネシマのことを言っているのだろう。
コネシマが私の体調を気遣ってくれたのだろうか。
犬にそんなことができるんだ。動物に対して感心を受ける。
後で感謝しないと。
上着替えな〜、と緩く言い、氷袋をもったしんぺい神はカーテンから出ていった。
手際がいいのか悪いのか、初心者の私にはよくわからない。
少し額の冷たさに慕っていれば、それもすぐ体温と変わらなくなっていった。
濡れたシャツを脱ぎ、新しいシャツを着れば、爽快感があふれる。
運動し終わったような疲労はないけれど、何か気を張っていたような感覚はある。
着替え終わり、少し頭を整理する。
と、ガラッとカーテンが開いた。
間抜けにも驚けば、そこから顔を出したしんぺい神の笑い声が聞こえた。
少し恥ずかしく思えば、彼は袖で口じ手を当てて謝罪した。
「んふっ、、ごめん。伝え忘れててさ。
大学は休みにしといたからね、サボらせても良かったけど…まぁ、それは望まないでしょ」
「ありがとうございます…」
「は〜い、ゆっくりしておきな
あ、あとご飯」
両手にボンっとのせられたのは、ランチメニューの如く豪華なものだった。
ご飯、と何処か使い勝手悪そうに言って出されたものとは思えない。
あれこれ言う前に彼は出ていってしまった。
…ありがたく頂こう。
なんか色々任せてきってしまっている。
ウィンナーを箸で摘み、いい具合に焦げてるなとか高級そうだなとか無駄な感想を心で唱えた。
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