恋と笑いは紙一重【芸人短編集】

会いたい 【有吉弘行】 ページ14

モ モ .さんのリクエストです。




・


有「よぉ、そっちでも元気してっか。」


《元気元気ー。そっちは？》


有「相変わらずだな。」


《そっかぁ。》





ある日、Aから半年ぶりに電話がかかってきた。彼女は福祉のボランティア団体に入っていて、貧しい人達を少しでも助ける為にと世界中を回っている。今はカンボジアにいるそうだ。




有「よくそっちから電話繋がったな。」


《本当だよー。こっち電気繋がってるとことかも全然無くてさー。村の人達に電話繋がるとこ聞いて車で1時間半かけて来たんだよー。》


有「で、また1時間半かけて帰るってか？」


《まぁね。でもこっちは今夜の10時だから一晩車で寝てから明日の朝に帰るかな。》


有「大変そうだなお前も。」


《まぁね。》




受話器の向こうからAの笑い声が聴こえる。そういえば、前にAに会ったのはいつだっけ。３年……いや、もっと前だった気がする。


ぼやぼやと考えていると、Aが息を吐く音が聴こえた。俺はその音に耳を傾ける。





《会いたい。》





Aが言ったたったの四文字が重く聴こえて、胸に何か重りの様なものがのしかかった感じがした。でも、同じ事を思ってくれている人がいるって、こんなにも嬉しいのか。




有「……俺もだよ。」





また、受話器の向こうでAが笑った。声だけじゃ嫌だ。顔を見てAと話がしたい。でも、ワガママなんて言えないよな。お前が選んだ道なんだから。




《……じゃあ、もう切るね。》


有「元気でな。」


《うん、そっちも。》


有「おう。」






プツリと電話が切れて、受話器を置いた。言いたかった言葉が言えなかった。頭が真っ白になって、俺は机に突っ伏した。







好きだ。

ｶﾀｵﾓｲ 【さや香 石井】→←滑舌弄り 【三四郎 小宮】

ラッキー芸人

ラニーノーズ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す