純愛ホームラン【S.Ohtani】 (ページ3)

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第２球父と娘ページ3

父「さっきはいきなりすまんかった……。いやぁ、大谷くんとは……驚いたわ………。」

大「こちらこそすみません……。いきなり来てしまって。」

母「大丈夫、気にせんとよかよ。……で、お二人のなれそめは？」

『あ、それは私から………。』

私は両親に私と大谷さんのなれそめをゆっくりと話す。建は結構驚いていたが、建のスマホの通知が鳴りやまない。きっと建が早くも友達に大谷さんの事を知らせてしまったのだろう。

話終わると、父さんはお茶を一口飲んだ。私と大谷さんは父さんからの返事を待つ。母さんは静かに台所へと姿を消した。

・

父「アカン。」

あっさりと父さんの口から出た言葉が私の頭に刻まれる。一瞬だった。その言葉が口から出されたのは。

『なしてアカンと？』

父「お前ら二人がお互いを好いとぉのは分かった。やけん、恐いんや。大谷くんはメジャーに行くかもしれんのやろ？それにAは付いてけるんか。海外やぞ？まだAは24やけん。まだ他の考え方がある。」

大「え……、Aさんって、僕のひとつ歳上………？」

『アレ……、私言ってませんでしたっけ？』

父「ほら、そういうとこもあるやろ？」

ストンと父さんの言葉が私の中に落ちたとともに、何とも言えない“怒り”が沸々と芽生えてきた。私は机を大きく叩く。台所の奥で、母さんの肩がびくりと動くのが見えた。

『なしてアカンと!?お互いの事が分かってないんなら、またこれから知っていけばええんやないん!?それに私……大谷さんが好きやけん………好きになった人の為になら何処にでも行ける……！海外なんて朝飯前やけん！』

父「ほなら英語も何も分からんのに行けるんやな。父ちゃん達は何も手伝わんとよ？帰って来いとも言わんけんね。」

『!!!、………何も分かっとらんわ！』

私は家を飛び出す。
大谷さんが腕を伸ばしたのがチラリと見えたが、見えないふりをして靴もはかずに出てきてしまった。

何も分かっとらんのは私の方だ。

父さんの言っている事が最もだって気付いたから。

私、何も分かってなかった。

何とかなるって、そうとばかり思ってた。

心のそこでは、きっと大谷さんが何とかしてくれるって。そんなずるいことまで。

私は月が浮かんできた空の下を必死に走る。

秋の風が、私の頬をかすめた。