2023/03/12 ページ19
3月某日、ロサンゼルス。
この時期のロサンゼルスは、昼間は真夏のように気温が上がり、夜になると昼間の暑さがなんだったんだろうというくらいに寒くなって、厚手のジャケットが手放せない季節だ。日曜の夜9時、私は薪ストーブに薪を焚べながら、きちんと火が点火したのを確認して立ち上がった。
｢ママ！テレビにパパおる！見て！｣
『あ、ホントだパパだねぇ。日本で今野球凄い頑張ってるんだよ。さ、裕平。もう9時だからお布団入る時間でしょ？陽平ももう先にお布団で寝てるから入ってきな』
｢ママも後で来る？｣
『うん。もうちょっとしたら後で行くね』
｢待っとるからね！ぜったいね！｣
『うん、絶対』
｢げんまん！｣
『はい、げんまん』
裕平と指切りげんまんをして、寝室へ送り出す。一人残ったリビングで、今日も一日終わったなとソファに腰かけた。テレビには裕平の言う通り翔平が映っていた。WBCで日本にいる彼、忙しすぎるみたいでニュースでしか今の状況が分からないけれど、正直不安になることばかりだ。死球とか、…死球とか…。あと…、死球とか…(汗)。
本当にそれが気になって仕方ない。翔平のメンタル面でもかなり来ているだろうから、私が何とかしなくちゃな…。ギュッと唇を噛むと、スマホから着信音が鳴り、ビクッと肩を揺らした。こんな時間に珍しいなと画面を覗き込むと、そこには"翔平"の名前。私は急いで電話を取った。
『も、もしもし！翔平…？』
｢もしもし？ごめん、そっちはもう夜でしょ？こんな時間に電話とか…｣
『大丈夫、さっき裕平たちも寝たとこだったから。日本は今…えっと…』
｢昼の3時｣
『そんな昼間に忙しいでしょ？無理してかけてこなくても…』
｢いいの、Aの声どうしても聴きたかったから｣
電話の奥で笑う翔平の声が奥まで響いて、大好きな笑顔が脳裏に浮かんで、愛おしさで胸がきゅっとなる。
『そういえば死球大丈夫だった！？ビックリしたでしょ？ニュースで見て私もビックリしちゃって…』
｢そりゃあビビったよ。でもあたってないし大丈夫。心配かけてごめん｣
『翔平が無事ならそれで良かった…』
｢元気元気！今から裕平陽平とキャッチボール出来るくらい元気！｣
『2人も早くパパに会いたいって言ってた』
｢そっかそっか。…Aは？｣
『私も会いたいよ』
｢うん、俺もAに会いたい｣
照れくさくなって笑うと、彼も恥ずかしそうに笑った。
まるで初恋のようにうぶな二人だった。
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トラッキー
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作者名：ユカリ | 作成日時：2017年10月25日 22時
