第八話 陸上部の思い出２ ページ9
りょうside
大会の結果で賭けをしている俺とてつやは自己ベスト更新を目指して、もう一度トラックに立つ。お互い柔軟を済ませてさぁ走ろうと言う時に、遠くからゆめまるが急いでこちらにやって来るのが見えた。
ゆ｢りょうくん！てつやぁ！｣
て｢あん？｣
り｢ゆめまる自己ベスト出たー？｣
ゆ｢それどころじゃなくて！Aっ…！Aが…！！ｹﾞﾎｯ…｣
て｢Aがなに？｣
相当急いで来たのかゆめまるは膝に手をついて咳き込みながら必死に言葉を紡ごうとする。俺とてつやは顔を見合わせて｢？｣という表情を浮かべた。
り｢Aがどうかした？｣
ゆ｢Aが今…、着地失敗して…ｹﾞﾎｯ…。足首…やった…！足変な方曲がってた…！｣
て｢えっ、マジ…？｣
り｢てつや行こ｣
俺ら3人は急いでAの元へと向かう。棒高跳びの練習を行っている場所に着くと、そこには他の部員に囲まれてウレタンマットの上で横たわるAの姿があった。
『ぅ"ー…』
て｢A！｣
ゆ｢A大丈夫！？｣
り｢いくと見てた？｣
い｢俺、計測やってたんで見てました。なんか着地した時に足首変な方曲がって…。見た瞬間ヤバッて思ったんスけど…。案の定足首やったみたいで…｣
『痛い…めっちゃ足痛い…』
て｢取り敢えず保健室…。俺連れてくわ！｣
り｢いや、俺行く。保健委員だし｣
ゆ｢りょうくん頼んだ｣
り｢A、肩掴まって｣
『うん…っ』
り｢歩ける？ゆっくり行くよ｣
『ありがとう…』
俺はAの肩を支えてゆっくりと保健室に向かう。Aは片足を引き摺りながら歩いた。囲んでいた人混みは散り始め、Aのことを噂している声がどこからか聞こえてきた。
｢えっ、佐藤先輩足やったの？｣
｢なんか着地失敗した？みたいな｣
｢全国決まっとったよね？出れるんかな？｣
｢んー…、足の状態によりけりじゃない？｣
｢そうだよねぇ…｣
部員の中で数名だけ、既に全国出場が決まっているメンバーがいた。Aもその一人だった。多くの不安と少しの期待を抱きながら、俺は軽く汗で湿ったAの脇腹を支えた。
・
ゆ｢足のケガ大会に響かないといいけど…｣
て｢なんでりょうばっか…｣
ゆ｢？、てつやなんか言った？｣
て｢…いや、なんでもね｣
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作者名：べりー | 作成日時：2022年5月10日 19時
