第二十三話 内緒話 ページ24
それから何となく居心地の悪さを抱えながらも、俺たち東海オンエアは岡崎市で開催される「岡崎城下家康公夏祭り花火大会」の日を迎えた。
コロナの影響で2年間中止が続いていたが、今回は感染防止対策として花火の無料観覧エリアは設けず、有料観覧エリアのみ。出店なしの小規模な開催となった。東海オンエアは岡崎観光伝道師として花火大会の協賛者なので、協賛者専用特別無料観覧エリアに招かれていた。
虫「えー、花火久しぶりやん。ワクワクする」
ゆ「今年初の花火じゃんね」
し「一人ブッサイクな顔の奴おるけど」
『ブッサイクな奴が言うな』
と「は？お前まだへそ曲げとんの？」
『だってだって！出店の出てないお祭りなんてお祭りじゃない！』
と「風情って言葉知らんやろ」
焼きそば、たません、りんご飴。出店で美味しいものをお腹いっぱい食べるという楽しみを奪われたAはさっきからずっとプリプリ怒りながらうちわを扇いでいる。そんな表情に似つかわしくない白地に水色の金魚が泳ぐ浴衣姿に俺はずっと胸を縛り上げられていた。ずっと無口なてつやは、どうだか。
ﾄﾞｰﾝｯ…
ゆ「あー！始まった！」
と「ちょっ、スマホスマホ」
し「何時までやんの？」
虫「20時半」
『綺麗〜』
開始時刻と同時に花火が打ち上がり、各々花火を楽しむ。さっきまで仏頂面のAも夢中になっているようだった。だけどやっぱりてつやはずっとどこか別の方を眺めている気がする。上の空で、気が抜けたような。
そんなてつやをしばらく眺めていると、不意に目が合って、ちょっとだけ険しい顔をされた。
俺はそれが気に入らなくて、声をかけようとする。
り「てつやさっきから何…」
て「Aあっち行こ。ちょっと二人の時間欲しい」
『いいけど…』
し「うわ！イチャイチャするんだコイツら」
ゆ「こっちは嫁達家に留守番させてんだぞ！」
虫「そーだそーだ！」
てつやとAは立ち上がってしばらく歩き、暗闇へと消えていった。残された俺たちはと言うと、ここ最近のグループ内の妙な雰囲気や空気から察していた何かを探るように皆で何か言いたそうな顔をしてチラチラと視線を交わしていた。
と「りょうちょっと探ってきてよ」
り「はぁ？絶対やだし…」
と「お前がA助けんで誰が助けんのって」
り「俺はもうフられたの」
と「これ以上Aのこと泣かせんって言ったやん」
としみつの言葉と押しに負けて、俺はため息をつきつつも2人の後を追った。
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作者名：べりー | 作成日時：2022年5月10日 19時
