第二十話 底なしの孤独をどうしよう ページ21
『りょう…』
り｢もっかいだけ｣
『でも、てつやが…』
り｢今はてつや忘れて｣
『そんなん無理だって…』
り｢今は俺だけのものになって、お願い。ずっと我慢しとったから｣
『やめてっ』
り｢A｣
『やめてってば！』
Aが振り払った拍子に俺の肩にAの手がぶつかる。遠ざかった俺と小さく縮こまる彼女。肩を揺らして蹲りながら泣いていた。
『てつや馬鹿野郎！！クソ！！浮気なんて姑息な真似しやがって！！クソッ…！！あんなに好きって言ってたのに！！としみつより幸せにするって言ったのに！！嘘つきやがってクソ！！』
り｢A…落ち着いて…｣
『クソクソクソ！クソ…ッ！うぅっ…ｸｿｯ…』
しばらくの沈黙とすすり泣きの不協和音に耐えられなくて、恐る恐るAの背中に手を置いて摩った。
り｢…ごめん、何もしてあげれんくて｣
『……私もごめん。さっき怒っちゃったから…』
り｢いや、さっきのは俺が悪かった｣
『……てつやと別れるよ』
Aは俯きながら静かにそう言った。ゴシゴシと顔を拭ってから、大きくため息をつくようにハーッと息を吐いた。そうした方がいい。君がこれ以上苦しむのを見ていられないし、俺がこれ以上苦しみたくなかった。
最終的には俺ばっかか、結局。
『戻ろっか。早く撮影しないと…』
り｢大丈夫？｣
『ん、もう大丈夫』
り｢無理せんといてよ？マジで｣
『んー。…あ、ねぇりょうっ』
り｢ん？｣
『ありがとう。りょう大好き』
笑いながら言う彼女のその言葉に、目がくらみそうなほど視界がチカチカした。あの時、君を好きになった瞬間が脳裏に嫌というほど焼き付いていて。
り｢これ以上好きにさせんといてよ…｣
『ごめんって』
近くて手に入らない君を思って泣きそうになった。
ごめんね、愛してるよ。
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作者名：べりー | 作成日時：2022年5月10日 19時
