第二話 こんな彼氏はイヤだ ページ3
てつやと付き合ってから半年と少しが経つ今日この頃。そりゃあ毎日嫌というほど会っているけど、たまには恋人らしく二人きりの時間もあるわけで、てつやの家で二人でのんびりごろごろ。あ、二人じゃなくて二人と一匹か。
『アルギュロスアイルーロスぅ〜今日もかぁいいね〜』
て｢フルネーム長ぇんだからアルルって呼べや…｣
『別に間違ってないんだからいいじゃん。ねーっ』
て｢ほらー！アルル嫌がっとるから！｣
『嫌がってないもーん。ｲﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ…』
て｢超嫌われとるやん｣
てつやが飼っているアメリカンショートヘアのアルルは私の顔に連続キックをカマしたら颯爽と歩いていってしまった。猫といえど侮れぬ。
『ねー、APEXしてないで暇だしどっか出かけよーよー』
て｢出かけるっつっても近所は視聴者とか居たらマズいしなぁ｣
『じゃあお昼時だしまんぷく家は！？』
て｢虫さんにA専用のサラダチキン持たされてるから昼はそれ食えって｣
『用意周到過ぎてなんなのあの人』
て｢先週も暇って言って結局日帰りで下呂温泉行ったんだから、今日は家でゴロゴロでもええやん｣
『えー！やだやだ暇暇暇！！』
て｢うるせーなー｣
画面に釘付けのままゲームに夢中なてつやにイラッとする。彼女を置き去りにしてAPEXをするなんて典型的な嫌な彼氏ですよ小柳津くん。
『てつやぁ、ちゅーーーー』
｢ちょ、待って待って。今いいところ…｣
『うわっ、彼女からのちゅーよりゲームとかマジありえない』
｢いやホントに後ちょっとだから待ってってー｣
『私に告白してきた時は可愛かったのになぁ…。｢俺ェ、お前のこと…諦めたくないんよ…(てつや風ボイス)｣とか｢俺なりのプロポーズだからｧ…(てつや風ボイス)｣とか言ってたくせにさｧｰ』
て｢何そのモノマネうざっ｣
『そういうとこからレスとか始まるんだぞ！』
て｢俺そういう欲だけは人一倍あるから安心して｣
『そういうことじゃなぁあああい』
て｢はいはい、ちゅっちゅっちゅ｣
面倒くさそうに私の頬に軽くキスしたてつやはすぐに画面の方を見てしまった。一人でプリプリ怒っている私は諦めてスマホを見る。幾つかの通知とりょうからのLINE。なんの用だろうと思ってトーク画面を開く。
りょう今からしゃぶしゃぶ行かんー?奢るわ
『てつやちょっと出かけてくる！』
て｢は？えっ、どこに？｣
『りょうのトコ！』
て｢はぁ…｣
私は急いで荷物をまとめて家を出た。
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作者名：べりー | 作成日時：2022年5月10日 19時
