第六話 ページ7
「…はい。じゃあこれで打ち合わせは終わりです」
「はい、ありがとうございました」
「ではまた収録の時よろしくお願い致します」
二人してペコペコと頭を下げて、お互い背を向ける。俺が一人で出演する番組のスタッフさんと打ち合わせを終えて楽屋に戻ると、村上がパッとこちらを見た。
「ねぇ、野田氏の彼女超可愛いじゃん！」
「は？」
「これこれ」
村上は机の上に置いてあった俺のスマホを突き出した。俺がスマホを開くと、村崎さんからのLINEの通知が来ていて、俺と村崎さんで撮ったツーショットが送られていた。そういや昨日、駅から店まで歩いてる途中に彼女が「職場の人に自慢させて」と一緒に撮ったんだっけ。
「それ彼女じゃない」
「え？じゃあ誰よ」
「小中高と同級生だった知り合い。久しぶりに会ったから昨日飯食ったの」
「へぇ〜、めっちゃ可愛いじゃんこの子」
「そう？」
「あー…、橋本環奈ちゃんの方が可愛いけど」
「最低だな」
村上は笑いながら「冗談冗談〜」と言った。確かにその反応は満更でもなさそうで、俺のスマホの画面を暫く穴が空くほど見ていた。俺はその村上の姿を暫く穴が空くほど見つめた。なんなんだその彼女を見る目は。村上ガールズとやらに入隊させるつもりか？
悶々とどうでもいい言葉ばかりが駆け巡る。ただ村上が彼女に対して変に執着しているのが気に食わなかった。
「…この子野田氏のこと好きなのかしら？」
「え…なんで？」
「この写真撮ってるのってこの子でしょ？」
「そうだけど」
「これ、スマホ持ってない反対側の手でピースするなりなにかポーズすればいいのにこの子野田氏の肩に触れてる」
「あー…まぁ、確かに…」
「普通相手の肩なんか触る？特に異性の」
「触るっつーか…触っちゃったじゃないのこれ？故意に触ってる感じじゃないし…」
「そうかな…。まぁ僕には関係ないんだけどね〜」
「ここまで喋っといて何だそれ…」
「だってただの同級生なんでしょ？」
「そうだけど…」
「…浮気とかやめてよぉ？野田氏らしくない…」
「するかバカ。なんならお前が村崎さん貰ってけば」
「何その"貰ってけば"ってぇ！モノみたいに扱わないの！村崎さんをぉ！」
「はいはい」
適当にあしらうも、その後村上は一人で「村崎さん…村崎さんかぁ…」とブツブツ呟いていた。どうせこの話なんて明日か明後日にでもなりゃあ忘れてるだろうと、俺はその程度にしか思ってなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「お笑い芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
skmhlily0(プロフ) - 読み入ってしまいました。シリアスものが好きなのでとても面白かったですし、表現も素敵でした！最後どうなってしまったのか気になります、、！ (2021年4月21日 1時) (
レス) id: a667278346 (このIDを非表示/違反報告)
まお - とても面白かったです！野田さんでまたお話書いてほしいです、今度はラブコメとかで（笑） (2021年4月21日 0時) (レス) id: 88e2cb16f6 (このIDを非表示/違反報告)
べりー(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます。まだまだ拙い文章ですがこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (2021年3月28日 20時) (レス) id: f9102047d4 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - とても素敵な作品で感動しました。お二人の行動も言動も自然で読んでいて違和感なくスッと入ってきます。切なくて続きがどうなるのかドキドキしてたまりません。これからも更新楽しみにしております。お身体に気をつけて無理せず執筆なさってください。 (2021年3月26日 0時) (レス) id: 28c50f8619 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねむ | 作成日時：2021年3月2日 18時
