第二十三話 ページ24
野田side
・
｢なに？｣
｢いや、ちょっと言いたいことがあってさ｣
｢あ、そう｣
｢うん…｣
次の日、タクシーの中で村上と短い言葉を幾つか交わした。次々と流れていく東京の街を眺めながら、俺は何となく確信していた。正直解散でも何でも良いと思った。いっそのこと殺しても良いと。いや、それは言い過ぎか？
｢Aちゃんに何したの｣
｢何って…別に何もしてないけど｣
｢泣きながら野田くんの名前呼んでたけど｣
｢…ちょっとホテル連れてっただけだよ｣
｢自分が何したか分かってんの？｣
ちらりと恐る恐る村上の方を見ると、バッチリ目が合ってすぐに逸らしてしまった。分かってるよ、俺が一番最低です。はい、これでいいんだろ？そもそもタクシーの中で話すことじゃないだろ。
俺と同じ気持ちだったのか、村上は運転手に｢ここで降ります｣と言って金を払い領収書を貰い、2人でタクシーを降りた。目的地まで15分ほど、その道程を歩いていく。
｢最低だよ君｣
｢…｣
｢Aちゃんのこと好きなら好きでいいんだけどさ。もっと他に伝える方法なかったの？あったよね｣
｢…｣
｢野田くんと付き合ってた彼女さんは？黙ってるつもりなの？｣
｢それはもう…別れた、っていうか…｣
｢可哀想だよみんな、君のせいで｣
目を合わせることも無く前を向いて歩きながら言う村上は、明らかに今までに見た事ないほどキレていて、下手なことを言えば本当に殴られるんじゃないかと思うほどに殺気立っていた。
"可哀想だよみんな、君のせいで"
脳に反響するその言葉を包み隠すように奥の方に閉まっておく。目を瞑って、開いて、東京の街並みを見渡した。
4月11日 東京 晴れ
若い女の子が携帯で必死に遅刻の弁解をしながら、小走りで横を通り過ぎていきました。
目的や要件に縛られることは、
とても不自由なことだと思いました。
ただそれが辛うじて、今の自分の廃れかけた心を潤してくれる唯一の励みなのだと言い聞かせて。
｢金輪際、彼女に近付かないで｣
ここは静かでした。
｢近付いたら｣
とても…、
とても……、
｢…――……―…から｣
とても静かでした。
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skmhlily0(プロフ) - 読み入ってしまいました。シリアスものが好きなのでとても面白かったですし、表現も素敵でした！最後どうなってしまったのか気になります、、！ (2021年4月21日 1時) (
レス) id: a667278346 (このIDを非表示/違反報告)
まお - とても面白かったです！野田さんでまたお話書いてほしいです、今度はラブコメとかで（笑） (2021年4月21日 0時) (レス) id: 88e2cb16f6 (このIDを非表示/違反報告)
べりー(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます。まだまだ拙い文章ですがこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (2021年3月28日 20時) (レス) id: f9102047d4 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - とても素敵な作品で感動しました。お二人の行動も言動も自然で読んでいて違和感なくスッと入ってきます。切なくて続きがどうなるのかドキドキしてたまりません。これからも更新楽しみにしております。お身体に気をつけて無理せず執筆なさってください。 (2021年3月26日 0時) (レス) id: 28c50f8619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむ | 作成日時：2021年3月2日 18時
