第十九話 ページ20
『光くん…どこまで歩くの？さっきから光くんちょっと怖いよ…。足…、歩き疲れちゃった…』
人混みの中を彼女の手を引いて歩く。何してるんだろう、俺。とにかく彼女とどこかに。気を紛らわせられるならどこでもいい。
「カラオケとかで休もうか…？」
『ああいう場所苦手…』
「漫画喫茶は？」
『私、漫画読まないから…』
"…じゃあこのまま二人で電車に飛び込もうか？"
『…え？』
「……ホテル、行こうよ」
君は俯いたまま僕の顔を見ることは無かった。手を繋いでいるのにどこか遠くに行ってしまうような気がして、もっと強く握った。その手を引いて歩いて行く。繁華街を通り抜け、風俗街を通り抜け、その奥の方のもっと奥。装飾で彩られて高い建物が多くある所。そのひとつに入って、君と部屋を借りた。
ベッドに横たわる君は遠くを見ていて、俺はそこに膝立ちになる。そのまま君の上にのしかかった。体制を崩すと、君は俺の背中に手を回してキスをする。何かが頭から突き抜けていった気がした。
村崎さん…Aちゃん。
君がどういうつもりなのか知る由もないけれど。
俺は、何やら悲しい。
いずれにせよ、数年ぶりに再会した軽薄な同級生Aに簡単について来てしまう不良娘であることは明白であり、俺は、僭越ながら俺は。
…順風満帆な君を不幸に叩き落としたい。
「ハァ…ハァ…」
俺に呪いをかけたまま別の男に連れて行かれてしまった君を、許したくない。
いや、こちらこそ身勝手な理由で申し訳ないが、…君も俺を軽蔑してくれないだろうか。
「ハァ…ハァ、ハァ…」
『ま、待って…』
下着姿になった君の胸を鷲掴むと、それを止めるように君は俺の手首を柔く掴んだ。力は入っていない。その手を簡単に振りほどくことも出来たが、どうにもできなかった。
『光くんは…いつも女の子とこんな事してるの…？』
体から吹き出す汗は尋常じゃなく、下着の中の秘部に手を滑り込ませていく。
『答えて…』
村上とシた時は泣きながらそんなに拒まなかったんだろう？どうして俺にはそんな顔するんだよ。
『お願い…やめて…やだ！！』
やだ!!!
俺が手を止めてベッドから降りると、彼女は肩で大きく息をしながら虚ろな目でこちらを見た。はだけた服を元通りにして、コートを羽織る。
『こんなことなら…二度と会えない方がよかった』
彼女は少しのお金を置いて出て行った。
俺はただ、自分のしたことの恐怖に震えていた。
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skmhlily0(プロフ) - 読み入ってしまいました。シリアスものが好きなのでとても面白かったですし、表現も素敵でした！最後どうなってしまったのか気になります、、！ (2021年4月21日 1時) (
レス) id: a667278346 (このIDを非表示/違反報告)
まお - とても面白かったです！野田さんでまたお話書いてほしいです、今度はラブコメとかで（笑） (2021年4月21日 0時) (レス) id: 88e2cb16f6 (このIDを非表示/違反報告)
べりー(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます。まだまだ拙い文章ですがこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (2021年3月28日 20時) (レス) id: f9102047d4 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - とても素敵な作品で感動しました。お二人の行動も言動も自然で読んでいて違和感なくスッと入ってきます。切なくて続きがどうなるのかドキドキしてたまりません。これからも更新楽しみにしております。お身体に気をつけて無理せず執筆なさってください。 (2021年3月26日 0時) (レス) id: 28c50f8619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむ | 作成日時：2021年3月2日 18時
