第十四話 ページ15
「野田氏帰る？」
「んー…まぁ、はむはむにご飯やんなきゃだし…」
「ふーん、じゃあまた明日ね」
「おー」
村上に背を向けてひらひらと手を振りながら楽屋を出る。タクシーを掴まえてさっさと帰ろうかとスマホを見てテレビ局の出入口に近付くと、見覚えのある人影がそこにあった。無性に、近付きたくなかった。
『…あ、光くん』
「あ…、村崎さんじゃん。なんで居んの？」
『車で迎えに来たの。崇裕くん…』
「あ、あぁ…そっか…。そういや聞いたわ付き合ったって」
『うん、まぁね』
お互い愛想笑いのような笑みを浮かべて、何とか話を続ける。このままどうやって去ればいいんだろうか。いきなり「じゃ、こなへんで」と言うのもなんか変な気がするし「調子どう？」もおかしい気がする。
「あー…相方と知り合ってまだ二回目だったのになんでもう付き合う流れになったんだよ？」
『えー、それ聞いちゃう？なんか恥ずかしいなぁ』
俺の口から出た突拍子も無い質問に、村崎さんは恥ずかしそうにしてケラケラと笑った。あぁ、可愛いなぁ。今すぐにでもその可愛らしい唇を奪ってしまいたい。
『光くんの相方だからきっといい人なんだろうなってのは思ってたんだけど…、実際に会って色々話してみたら面白くて…。それに話も聞き上手でさ…』
横髪を軽く搔き上げるその細い指もいいなぁ、俺の指と絡ませたい。
『たまにキザなことも言うけど…そういう所がまたかっこいいって言うか…』
スカートから覗くその色白で柔らかそうな脚も目を奪われる…。膝枕とか気持ちいいだろうなぁ…。昨日は…何度そこを村上に撫でられたんだろうなぁ…触れられて！舐められて！！
『だから本当に…崇裕くんの魅力にやられちゃったかな…』
あぁ神様でも何でもいいから
まだ間に合うのならば、彼女を僕にください！！
…
「…あれ？野田氏とAちゃん？ここで何してんの？」
『あっ、崇裕くん』
「迎えに来てくれてありがとうね。帰ろうか。じゃあ野田氏またねー」
『光くんまたねっ。…ねぇ崇裕くん、ウチでご飯食べて行きなよ』
「えっ、やったぁ。そうするー」
俺はただ柔く手をあげて見送るしかできなかった。完全に二人だけの空気に呑まれてしまって、身動きすらできない。
ただ野田クリスタルこと野田光は今この瞬間、世界中の屑共にこう高らかに宣言したい気持ちでいっぱいでした。
…この世界はもう俺のもの。
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skmhlily0(プロフ) - 読み入ってしまいました。シリアスものが好きなのでとても面白かったですし、表現も素敵でした！最後どうなってしまったのか気になります、、！ (2021年4月21日 1時) (
レス) id: a667278346 (このIDを非表示/違反報告)
まお - とても面白かったです！野田さんでまたお話書いてほしいです、今度はラブコメとかで（笑） (2021年4月21日 0時) (レス) id: 88e2cb16f6 (このIDを非表示/違反報告)
べりー(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます。まだまだ拙い文章ですがこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (2021年3月28日 20時) (レス) id: f9102047d4 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - とても素敵な作品で感動しました。お二人の行動も言動も自然で読んでいて違和感なくスッと入ってきます。切なくて続きがどうなるのかドキドキしてたまりません。これからも更新楽しみにしております。お身体に気をつけて無理せず執筆なさってください。 (2021年3月26日 0時) (レス) id: 28c50f8619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむ | 作成日時：2021年3月2日 18時
