第十三話 ページ14
野田side
・
東京メディアシティ砧スタジオ。番組収録のため楽屋で控えていた俺は、スマホをいじったり時計を確認したり貧乏ゆすりしたりとそわそわと体を動かしてばかりいた。
｢遅い…｣
村上がいつもより来るのが遅い。そりゃあ俺より楽屋入りが遅いのはいつものことなので分かってはいるが確実に遅かった。ただ単に寝坊か、急なトラブルか、それとも…。何よりも不安だったのが村崎さんとのことで、早く問いただしたい気持ちでいっぱいだった。俺には何も関係ないことだって分かっているのに。
｢野田氏ぃ、おはよー｣
｢あっ、おう…。はよ…｣
｢あ〜…、眠っ…｣
｢いつもより遅かったじゃん｣
｢え？あぁ、ごめんごめん。Aちゃんを最寄りまで送ってから来たからさ…｣
｢最寄りまで送ってきた？｣
｢うん｣
｢…お前朝まで村崎さんと何してたんだよ｣
村上との間に流れる空気が一瞬にして張り詰めた。嫌な冷や汗がダラダラと流れて、背中がぐっしょりと濡れる。そもそもお前一昨日までAちゃんなんて軽い呼び方してたっけ？無数の点がひとつの線で繋がった。その線は絡みもなくちぎれもなく、とても綺麗な線。
｢もー、そんなこと聞かないでよォ。野暮だなぁ｣
｢だってお前…その…｣
｢…初デートにして初夜を過ごしましたけど何かぁ？｣
ぶっきらぼうに、それでも何処か嬉しそうな声色でそう返事をした村上は、少し照れくさそうに鼻の頭をかいた。あまりの展開の速さに脳がバグってしまった俺は、何故か必死に彼女の顔を思い出していた。こんな鼻をしていたっけ？唇は？薄くて淡いピンクで…もうこの唇にキスはしたんだろうか？きっとしたんだろうなぁ、どんな感触だったんだろう。瞳は？真っ黒で吸い込まれてしまいそうな程に深い三白眼…。
想像もしたくないのにくしゃくしゃの布団の上で体を捩らせる彼女が浮かび上がった。何度も何度も絶え間なく浮かび上がった。
ただそれでも何も出来ない俺は、平静を装って村上に笑いかける。引きつった頬をあるだけの筋力で持ち上げながら。
｢…てことは上手くいったんだ、告白｣
｢何とかね〜。はー…幸せすぎて僕そろそろ死ぬんじゃないのこれ…｣
｢死ね｣
｢何それ酷くない！？｣
｢お前が幸せそうなのムカつくわ〜｣
｢おいそれは理不尽過ぎるだろォ！｣
聞き慣れているはずの甲高い村上のツッコミが嫌な程鼓膜に響いた。気を抜いたら泣いてしまいそうで、俺は歯を食いしばった。
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skmhlily0(プロフ) - 読み入ってしまいました。シリアスものが好きなのでとても面白かったですし、表現も素敵でした！最後どうなってしまったのか気になります、、！ (2021年4月21日 1時) (
レス) id: a667278346 (このIDを非表示/違反報告)
まお - とても面白かったです！野田さんでまたお話書いてほしいです、今度はラブコメとかで（笑） (2021年4月21日 0時) (レス) id: 88e2cb16f6 (このIDを非表示/違反報告)
べりー(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます。まだまだ拙い文章ですがこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します。 (2021年3月28日 20時) (レス) id: f9102047d4 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - とても素敵な作品で感動しました。お二人の行動も言動も自然で読んでいて違和感なくスッと入ってきます。切なくて続きがどうなるのかドキドキしてたまりません。これからも更新楽しみにしております。お身体に気をつけて無理せず執筆なさってください。 (2021年3月26日 0時) (レス) id: 28c50f8619 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむ | 作成日時：2021年3月2日 18時
