恋と笑いは紙一重７【芸人短編集】

真似っ子こんこん 【きつね】 ページ18

瀬良子さんのリクエストです。
※男主です。






・


『どうもありがとうございましたー。』



頭を下げて、拍手を浴びながらもフリップを片付ける。ピン芸人初めて早数年、フリップのボケにツッコミを入れていくというのが俺の芸風だった。

舞台袖に出て、そそくさと片付けをし、次の仕事へ向かう。早くすることは早く済ます。それが俺のルーティーンだ。



《うっまーいこと言わんでええねーん！》
ﾌｧﾌｧﾌｧﾌｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧﾝ!!!



騒がしい機械音にしかめっ面をする。舞台を覗くと、最近ノリにノッている芸人のきつねが居た。若者にその｢パリピ漫才｣たるものが人気を博し、まぁ、結構売れてるらしい。


出番が終わったようで大津と淡路がハケて来る。そのまま俺の目の前にやって来た。




大津｢あっ、お疲れ様ですー。｣


淡路｢ですー。｣


『お前らの舞台上とでのキャラの違いを見るとゾッとするわ。』


大津｢まぁまぁ、そんなん言わんといてくださいよー。ええですよ？パリピ漫才。｣


淡路｢Aさんもぜひぜひ。｣


『パス。』


大津｢そんなー。｣





2人のテンションと俺のテンションは真逆過ぎて着いて行けるはずがない。そのまま楽屋に向かい、クーラーの涼しさに肩を下ろしながら席につく。


そのまましばらくの間ぼうっとしていると、脳裏に過ぎったのはさっきの騒がしい機械音。




『…うっまーいこと言わんでええねん……。』


いや、俺何言ってんだ。独り言かよ。しかし、頭に色んな言葉が過ぎってくる。



『きつねこんこんブラザーズ…。DJ、パリピ、ウクレレ……。』



いやいや、完全にこれは離れない。なんだよアイツらのリズム感。そんな事を思いながらも、何となく体が動いて来て、一人できつねのネタのモノマネ大会。やめよう。今すぐやめよう。そう思っていても、頭からほいほいネタが浮かんでく((大津｢Aさーーーーーーん？｣



嫌ぁなその声に固まったように振り向くと、そこには満面の笑を漏らす大津さん。俺はプルプルと痙攣したように体を震わせる。



フリップが、音を立てて地面に落ちた。




まぁ、その後。俺は大津さんに弱みを握られてしまったらしい。

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