半分、愛。 【和牛 水田】 ページ43
瀬良子さんのリクエストです。
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今日も、半分雨が降っていた。
目を瞑ると、右の耳からは雨の降る音が聴こえてきて、左の耳からは何も聴こえない。だから、半分雨。それが逆に面白かった。
小さい頃、おたふく風邪にかかった時のウイルスが急成長したせいで、私は左耳の聴力を失った。それでもまぁ、完全に何も聴こえない訳じゃないし。普通に学校に行って、普通に寝て、食べてを繰り返す毎日だった。
まなみ「Aちゃん。次の授業調理実習やから、一緒に家庭科室行こ?」
『あ、うん。いいよ。』
親友のまなみが、エプロンの入った可愛らしい巾着を持って私に話しかけて来た。私も机の横にかけていた巾着を手に取って、席を立つ。
まなみは頭が良くて運動神経も良くて、美人で優しくて。皆の注目の的の女子生徒だった。そんなまなみが私の親友で、私は何時も、何となく自分が誇らしく思えた。
ま「あっ、水田先生。」
家庭科室まで行く途中、まなみが水田先生の姿を見つけて、二人で駆け寄った。水田先生は家庭科の担当で、先生も今から家庭科室に向かうようだ。
ま「今日は何作るんですか?」
水「皆大好きハンバーグや。ナツメグもちゃんと持ってきたで。」
ま「まぁたナツメグですかぁ?」
水「ナツメグは何にでも合う。」
まなみと水田先生が話しているのを、
私は右耳で静かに聴いている。
親友のまなみでも、私の好きな人と仲良く話しているのを見るのは、やっぱり複雑で。声を出すと、震えた声が出てしまいそうだから。私は口を固く結んだ。
水「な?Aもそう思うやんな?」
『……え、あ…。は、はい?』
ま「ちょっとー、聴いてへんかったの?」
『ご、ごめん。何かぼーっとしてて…。』
ま「ハンバーグにナツメグは要るのか要らないかって話。」
水「なんやA。お前、右耳まで聴こえへんくなったんかぁ?」
水田先生がニヤニヤしながら、意地悪そうに私の頭を引き寄せて、私の右耳と先生の顔を近付けた。
カッと頭に血が上る感じがして、私の体は熱くなる。好きな人にそんな事されたら、誰だってそうなるでしょ。
ま「あー、水田先生女子にセクハラー。」
水「なんでもセクハラにしようとすなっ。」
会話に戻った水田先生の横顔を見て、余計暑くなった右耳に触れる。
右だけ、暑い。
そんな半分だけの愛を、
私は泣きそうなくらい幸せに感じた。
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ユカリ(プロフ) - 皆様リクエストありがとうございます!全て承りました! (2018年4月18日 23時) (レス) id: 8263d84421 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - いつも素敵な作品楽しみにさせて頂いてます♪ とろサーモンの村田さんで付き合って初めての キスのお話が見たいです!無茶ぶりしてすみません。 よろしくお願いします´`* (2018年4月18日 19時) (レス) id: 74e9ccc556 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - リクエストお願いします、「出逢い」の粗品さんの続編をお願いしたいのですがよろしいですか? (2018年4月18日 1時) (レス) id: 95bd6dd099 (このIDを非表示/違反報告)
尚 - リクエストです!囲碁将棋の根建さんと文田さんのお話を別々にみたいです!お願いします! (2018年4月16日 23時) (レス) id: f0b3170452 (このIDを非表示/違反報告)
ユカリ(プロフ) - 皆さんリクエストありがとうございます!全て承りました!! (2018年4月16日 0時) (レス) id: 8263d84421 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユカリ | 作成日時:2018年3月30日 23時