33(side T) ページ33
多分、俺たちは"友達"として上手くやれていると思う。
はじめは、どうしたら接したらいいかわかんなかったけど、そんなの考えたって仕方ないと考えるのを放棄してあくまで普段の自分のペースでAに接することにした。
そしたら案外いい感じで距離を詰められた気がして、自分でも少しだけ嬉しくなった。
「カードの開封作業って楽しい？」
「めっちゃ楽しい！っていうか作業って言わないでくれる？あくまでこれは神聖な儀式なわけよ」
「はぁ、神聖な儀式ねぇ」
「Aもやってみたら分かるって」
「もうそう言われて何回かやったでしょ」
目の前のAはそう言って呆れた表情を浮かべながらもなんだかんだで俺の趣味に付き合ってくれている。
本音を言えばもうちょっと興味を持ってくれてもいいんじゃ？なんて思うけど、でも無理矢理興味を持たせるような勧誘の仕方は俺の美学に反するから無理強いはしない。
「それより、これめちゃくちゃ美味いね」
「そう？ありもので適当に作っただけだけど」
「また食べたい」
「それは無理な話ですねぇ、この味は2度と再現出来ないと思う」
「Aって見た目通りだよね、なんか」
「それは悪口だよね、完全に」
「いや、褒めてるの。裏表がなくていいね、って」
「あっそ」
いつしか俺たちは互いの家を行き来するようにもなっていた。
っていうかほとんどは俺が押しかけたり、なんだかんだ理由をつけて家に招いたりしてるんだけど。
外で会うのもいいけれど、やっぱり人目ってものもある程度気にしなきゃいけないし、そうなるとなかなか気も休まらない。
それだったらこうやって家にいたほうが余計なことを気にせず過ごせるから気楽。
A曰く二度と同じものは作れないという名もなき料理を口に運ぶ。
話しても話さなくても特に変わらない空気感は、随分と長い昔からの友達のような感覚にさえなる。
なんていうかAと過ごす時間はすごく心地よくて、言葉には出来ないけれど忙しい日々の癒しに確実になっていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1916人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もえぎ | 作成日時：2021年12月26日 17時
