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SixTONESのインタビューをしてから数週間。
インタビューしたものは、無事に世に送り出され、ひとまず任された案件が終わったことに安堵した。
あの日以降私はまた元の仕事に戻り、体力も気力も消耗しながらなんとか日々をやり過ごしていた。
何度か、見知らぬ番号からかかってくる電話。
時間帯はいつもバラバラで、なぜかその電話がかかってくるときに限って私は何かしらをしていて電話と取れずにいた。
折り返したほうがいいのかな、なんて考えはするけれど、かかってくる間隔が1週間とか、10日とか、開いていることもあってきっと誰かが番号を間違えてかけているのかもしれない、と自分から折り返しすることはしなかった。
次かかってきたら出よう、と思ってはいるのだけどそういう時に限って電話は鳴らない。
「おい、いい話だぞ」
外回りから戻り一息つこう、とする前に部長が声をかけてきた。
部長が言う”いい話”がいい話であった試しがない。
警戒しているのが顔に出ていたのだろう。
部長は「そんな嫌そうな顔すんなよ。今回は本当にいい話だぞ」とまたひとつ笑う。
「で、なんですか。いい話って」
「ご指名が入ったぞ」
「ご指名？」
「この前の欠員代替でやった仕事あっただろ。あのジャニーズのインタビュー」
「あぁ、はい」
「またお前にやって欲しいって直々にタレントのほうから熱いオファーがあったんだとよ」
な、いい話だろ？と眉をくいっと上げて笑う部長を前に私は苦笑いを浮かべることしかできない。
「いや、それ全然いい話じゃないんですけど」
「なんでだよ？タレント様からのご指名だぞ？天下のジャニーズに食い込めれば安泰じゃねぇか」
部長の言葉にため息しか出来ない。
たしかに継続した仕事があるのは有難い。
ましてご指名をいただけるのも自分の仕事が認められたと分かって嬉しい。
嬉しいんだけど、でも、相手が問題なのだ。
「なんだったらそのままジャニーズ食っちまえばいいじゃねぇか」
「部長、それセクハラです」
「うわ、まじかよ」
慌てふためく部長を尻目にデスクへと戻る。
背中に「また来週予定入ったからよろしく頼むぞー」なんて声が聞こえたけれど、とりあえず聞こえないフリをしてパソコンを立ち上げた。
低い唸り声のような音を上げながら起動するパソコンをぼぉっと眺めていたら、なぜだか頭の片隅に京本さんの顔が浮かんだ。
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年12月26日 17時
