108:懐かしい ページ8
また手を繋ぎ直して、2人で歩く。
さっきの松村さんの言葉を頭の中で何度も何度も反芻して、そのたび込み上げる嬉しさに思わず握っていた手を大きく揺らせば「なに、ご機嫌ですね？」なんて笑われる。
ひとつのマンションの前で足が止まる。
「ここです。ここの503」
「え、めっちゃいいとこじゃないですか」
松村さんってもしかして？って恐る恐る横顔を覗き込めば、私が考えていたことを見透かすように「うちの会社、無駄に住宅補助だけ手厚いんです」って松村さんが笑った。
「じゃ、ここだって分かったことだし行きますか」
松村さんはそう言って本当に自分の家を教えただけで、私を家に送り届けた。
そういうところがなんだか松村さんらしくて少しだけ可笑しかった。
#
久しぶりに飲もうぜ、って樹から連絡が来たのは松村さんと付き合うことになってから2週間ほど経ったときだった。
どうしようかと迷っていたら、松村さんに「行って来なさいよ」と背中を押された。
「うっわ、なんかお前」
「なに」
「幸せオーラがやばいわ」
待ち合わせ場所。
早く着いた私とそれよりも前に着いていた樹。
樹がこんなに早く待ち合わせ場所にいるなんて珍しい、と思っていたら私の顔を見るなら樹はそんな言葉とともに目尻に皺を寄せて笑った。
「上手くいったんだ？」
「…うん」
「そ、ならよかった」
これで俺も安心出来るわ、なんて樹が笑う。
意地でも幸せになれよ、ってそう言ったあの時の樹の言葉が頭の中に浮かぶ。
今はまだ胸を張って幸せになったよ、とは言えないけど、いつかはちゃんと樹にそう言えるようになりたいとそう思った。
「樹、」
「んー？」
「樹も幸せになってね、」
「お前に言われるとなんか腹立つな」
「なんでよ」
「でも、ありがとな」
「ん」
樹の骨張った手がぐしゃり、と頭を撫でた。
少し乱暴で、でもどこか優しいその手つきが懐かしかった。
「おーい、樹ー！Aー！！」
「ばっか、お前、声でけぇよ！」
人混みの向こう側から、ジェシーと高地くんの姿が見えた。大きく手を振るジェシーくんを高地くんが咎めてる。
相変わらずの2人の姿に顔を見合わせて笑う。
「あいつらうっさいし、このままあいつらのことまいちゃう？」
「それもありかも。あ、でもそしたら高地くん可哀想じゃない？」
「まぁ高地だしいいだろ」
「それもそっか」
そんなことを言い合いながら私たちはまた笑い合った。
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さーや(プロフ) - Hano.さん» お返事遅くなってしまいました、すみません…本編最後までお付き合いいただきありがとうございました！！番外編も少しずつですが更新していくので楽しんでいただけると嬉しいです〜！ (2021年11月2日 21時) (
レス) @page16 id: 4b2ff4c864 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - 何度もコメントごめんなさいですが、完結おめでとうございます！！いつも更新を楽しみにしてました！きょもほくの取り合い？みたいな所が個人的にお気に入りです^ - ^番外編も楽しみにしてますね！ (2021年10月25日 23時) (レス) @page13 id: c16f775043 (このIDを非表示/違反報告)
もえぎ(プロフ) - Hano.さん» はじめまして、コメントありがとうございます！お話楽しんでいただけているようで嬉しいです〜更新ゆっくりではありますが、読んでいただけると嬉しいです！ (2021年10月20日 21時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - はじめまして！いつももえぎさんの作品に癒されています！すとおたの友達いないのめっちゃわかります！！これからも更新楽しみにしてますね！！ (2021年10月20日 7時) (レス) @page2 id: 274f9384a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年10月19日 17時
