【番外編】憂鬱色の春（京本くんのお話） ページ14
俺の好きな人は、俺のことを好きにはならない。
この恋は実ることなど決してない。
例えるなら明けることのない春。鉛色の春だ。
#
新人研修の一環でやることになったグループワーク。
適当に割り振られたグループ。そこで俺とAは同じになった。
そのグループには役員の親族がなんかだという大谷という男もいたけれど、そこまで大きな波風も立たずに時間が流れていた。
グループで取り組んだ課題がようやく形になってきたのは、たしか4回目くらいの集まりのときだ。
「あとはお前らでテキトーにやってよ。こういうのはさ得意なやつがやったほうが上手くいくもんじゃん？」
大谷がそう言って、んーと体を伸ばした。
グループ全員の視線が自分に向いていることもさして気にしないように大谷は「俺にはこーゆーの必要ないからさー」なんてひとり笑い声をあげた。
多分、グループ全員が同じことを考えていたと思う。
でもそれを口に出す人間は誰もいない。そのかわりにそれぞれが拳を握ったり、唇を噛んだりした。
余計なことを言って波風を立てるより、あんな奴の話など聞き流して自分たちは自分たちでやることをやったほうがいい、とそう考えた。
それは俺も同じだった。
でも、Aはそうではなかったようだ。
「ねぇ、大谷くん」
「んー？」
「それって冗談で言ってる？それとも本気？」
「は？」
「冗談で言ってるならさすがに空気読めなさすぎて面白くないし、本気で言ってるとしたら可哀想で同情したくなるレベルで残念な人だな、って」
「なんだよ。お前」
大谷が苛立った様子で席を立ち上がり、Aの前に立ちはだかる。
女の子の前に男が立つなんてそれだけでも威圧感あるだろうに、Aはそんなの気にしない風な顔して「なに？何か気に障った？」なんて涼しい顔して言い放った。
「お前なんなの？俺をなんだと思ってんの？」
「大谷くんでしょ。私たちと同期の」
「…ふざけやがって、」
大谷がAの座っていた椅子の脚を蹴った。鈍い音が部屋に響く。
「もう知らね」そう言い放った大谷は苛立ちを表すように大きな足音を立てながら部屋を出て行った。
バタン、と大きな音を立てて閉まったドアにグループ全員の視線が集まる。重苦しい空気の中、またそれぞれが作業に取り掛かる。
でも、どこかスッキリした部分もあるのも事実で。
チラリ、と覗き見たAは、至って普通の顔をしてパソコンに向き合っていた。
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さーや(プロフ) - Hano.さん» お返事遅くなってしまいました、すみません…本編最後までお付き合いいただきありがとうございました！！番外編も少しずつですが更新していくので楽しんでいただけると嬉しいです〜！ (2021年11月2日 21時) (
レス) @page16 id: 4b2ff4c864 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - 何度もコメントごめんなさいですが、完結おめでとうございます！！いつも更新を楽しみにしてました！きょもほくの取り合い？みたいな所が個人的にお気に入りです^ - ^番外編も楽しみにしてますね！ (2021年10月25日 23時) (レス) @page13 id: c16f775043 (このIDを非表示/違反報告)
もえぎ(プロフ) - Hano.さん» はじめまして、コメントありがとうございます！お話楽しんでいただけているようで嬉しいです〜更新ゆっくりではありますが、読んでいただけると嬉しいです！ (2021年10月20日 21時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - はじめまして！いつももえぎさんの作品に癒されています！すとおたの友達いないのめっちゃわかります！！これからも更新楽しみにしてますね！！ (2021年10月20日 7時) (レス) @page2 id: 274f9384a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年10月19日 17時
