87:しどろもどろ ページ37
飲み終わり、2人で店を後にする。
店を出ると京本はさも当然のように私の家の方面へと向かい始める。
なんかもうそれをああだこうだ言う気にすらならないくらいに変に疲れた。
せっかく美味しいお酒を飲んだのに酔うことすら出来ず、アルコールの悪いところだけ体に蓄積された感じがする。
生ぬるい夜風が頬を撫でる。
隣を歩く京本は、何も言わない。
でも私の歩幅に合わせて歩いてくれてるから、一応気にはしてくれてはいるようだ。
「…なぁ、お前の気になってる松村って、アイツ？」
「ひっ、！な、なんのこと、？」
ようやく口を開いたかと思ったらそんなこと言うものだから、変な声が出た。
「お前ってさ、あぁいうのがタイプなんだな」
俺とは真逆じゃん、なんて自虐的に京本は笑う。
「いや、タイプというか…元彼は全然違う感じだったし、」
「そーだっけ？元彼どんなんだったっけ」
「どんなのって言われても…なんか細っこい犬みたいな？」
「なんだそれ」
ふはっ、って吹き出したあとで「細っこい犬ってさ、めっちゃ寒そうじゃない？冬」なんて犬の話を広げる京本に、内心そこ広げる？なんて思ったり。
京本ってこういうとき若干的外れというか、ちょっと違う角度から攻めてくる気がする。
「でも、タイプじゃなくてもアイツのことが気になるんだ？」
「気になる、というか、なんというか、」
油断したところにギュイン、って変化球投げてくるのやめてくれないかしら。
しどろもどろになる私を京本が少しだけ苛立ったような顔して見つめる。
「なんであんないけすかない奴なわけ？アイツより俺のほうが全然いいと思うんだけど？それともアイツになんか弱みでも握られてんの？」
「いや、えっと、ね？京本にも松村さんにもそれぞれいいところがあって、で、えっと、」
どちらのことを悪くもいいたくないし、かと言って一方の肩を持つこともしたくない。
どちらにもつかない言い方を考えたら、余計にわけがわからなくなっていく。
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年9月25日 13時
