83:呪いの効果 ページ33
携わっていた仕事がひと段落して、満ち溢れる達成感。
「がんばったー」って背もたれに寄りかかって、んんーと体を伸ばす。
蛍光灯の光が眩しくて、目の奥がちょっと痛い。
松村さんにかけられた呪いのせいで、あの日以降本当に頭の中は松村さんで溢れ始めた。
何かをしてれば気が紛れるけれど、ひとたび立ち止まるともうダメ。
仕事の達成感もそこそこに、すぐにぼわん、と浮かび上がるのは松村さんの顔で。
「…本当に呪いじゃん、」
思い出したら、あの時耳にかかった息とか、熱とかも全部鮮明に思い出せちゃうくらい。
振り払うように頭をブンブンと振ってもなくならなくて。
あーどうしたらいいの?
なんて思ってたら、目の前の光が遮られ、その代わりに「呪いがなんだって?」って京本の顔が視界に入ってきた。
…この角度から見ても綺麗な顔してるなぁ。
なんて思ってたら思いきり眉間をグリグリ押された。
「いった、い!」
「そこに皺寄せてるとすげぇブス」
「うっさい、余計なお世話なんですけど?!」
「余計じゃねえだろ。俺のために可愛くいろよ」
「なんで京本のためになんか!」
「えー俺のこと意識してくれてんじゃないの?」
「ばっ…か、じゃないの?!仕事中にそう言うこと言わないでよ!」
「ふーん、じゃあ仕事中じゃなかったらいいわけね」
そういうわけじゃない!って否定する前に京本はなんか納得した顔して頷くと自分のデスクに戻っていく。
やっと解放された、と椅子を前に向き直すと、
「あの、お2人仕事中にイチャイチャしないでもらっていい?」なんて阿部くんが笑う。
「イチャイチャしてない!」
「ごめんね、阿部くん、俺のAがうるさくて」
「誰がいつ京本のものになったのよ?!」っていう私の叫びはどこ吹く風で京本は涼しい顔してさっさと仕事に向き直ってるし、阿部くんは「お腹いたい」とか言ってお腹抱えて笑ってるし。
もう、どこ行っても敵しかないんだけど?!
「…飲み物買ってくる、!」
毎回毎回こうやって逃げるのもよくないけど。よくないけど!でもこの状況に平然とした顔していれるほど図太くないし、私。
気持ちを切り替えるためにも今の私には休息が必要なのだ。
そう自分にそう言い聞かせて席を立つと、自販機へと向かった。
.
1099人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月25日 13時