69:阿部くんの憂鬱 ページ19
毎日毎日デスクに置かれるカフェオレ。
それを見るたび、無意識にため息が漏れる。
時々デスクに置かれていないことがあって、よかったーなんて安心すると「これ例のヤツ」なんて阿部くんか笑って渡してくるから、阿部くんのこともそろそろ嫌いになりそう。
阿部くんから真相を聞いてから、なんとなくそのカフェオレを飲む気になれなくて。
悩んだ結果、デスクの一番下の引き出しに仕舞い込むことにした。
そうして、カフェオレはどんどん溜まっていく。
集団になったカフェオレを見ていたら無性に腹が立った。
そうだ、とひとつの考えが思い浮かぶ。
京本がずっと私にカフェオレを差し入れ続けるのであれば、私もやり返してやろうだなんて思ったのは改めて考えると自分でも意味がわからないしヤバイと思う。
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京本がデスクを離れた隙にコーヒーを置く。
…なんか、変な感じ。
なにやってるんだろ、なんて冷静になって考えてる自分もいる。
京本が戻ってくる前に慌てて自分のデスクに戻り仕事してる風な雰囲気を出す。
しばらくして京本が戻ってきた。
別になんにも悪いことなんてしてないのに、やけに左側だけ緊張して、変な汗かいてる。
京本は置かれたコーヒーが私からだとは思ってないようで、阿部くんに「これ、阿部くん？ありがとう」だなんて言っている。
阿部くんはさっき私が京本のデスクにコーヒーを置いたのを知ってるから、なんとも言えない表情をしながら「あぁうん、全然」なんて言っている。
…誤魔化すの下手だな、阿部くん。
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「ねぇ、ほんとさ、いい加減にしてくれない？」
「なんの話？」
「お前らのアレだよ」
社食でごはんを食べてたら阿部くんが向かい側の席に座る。
「間に挟まれてる俺の気持ちにもなってよ」なんて阿部くんは複雑そうな表情。
いや、悪いとは思うんだけど。
でもなんか止めるタイミングもわかんなくなっちゃったし。
「あれ〜？阿部ちゃん何やってんの〜？」
「あ！佐久間さん！！助けて！！」
ちょうど通りかかった隣の部署の佐久間さんに助けを求める。
「おうおうどうした？どうした？」
「阿部くんの治安が悪いです！」
「そりゃ大問題だ！この佐久間さんに任せろ！」
佐久間さんはほんとにノリがいい。
私のこんなしょうもないネタにノってくれるんだもん。
そんな私たちを見て阿部くんが「もうやだお前ら」と盛大にため息をついたのは知らないフリしておく。
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作者名：もえぎ | 作成日時：2021年9月25日 13時
