9:結論 ページ9
結論から言えば、その日私は田中くんに食われた。
2軒目に行って、程よく酔って、寝て覚めて気づいたら田中くんの家のベッドの中にいた。
「こんなすぐ手ぇ出すつもりじゃなかったんだけど、」
ベッドの端に腰掛けた田中くんが後ろ頭を掻いた。
女の私より細いんじゃないかってくらいに薄い背中越しに田中くんの後悔が見えた気がした。
「あのさ」
「は、はい」
「なぁんで敬語なん?」
眉を下げ笑う田中くんに、ごめん、と呟く。
「付き合おうぜ、俺たち」
田中くんの真っ直ぐな視線が向けられる。
逸らしたいのに逸らせないほど真っ直ぐで、真剣な視線は、痛みさえ伴う。
黙りこくったままの私に田中くんは顔を覗き込む。
「なぁ、どう?」
少しだけ不安そうで、懇願するようなその瞳が胸をざわつかせる。
このざわめきは、きっと。
「…お願いします」
私の言葉に「よっし」とガッツポーズをした田中くん。
そのあとすぐに近づいて来た唇が、ゆっくりと重なって熱を生む。
この胸のざわめきは、恋の始まりなのかもしれない。
そんなざわめきに身を任せるように私はそっと目を閉じて、田中くんの首に手を回した。
こうして私たちは出会って1日で恋人同士になった。
付き合っていた3年間はそれなりにいろんなことがあった。
すれ違ってケンカしたり、怒ったり、泣いたりたくさんしたけど、振り返ればそれなりに幸せな日々だった。
いつまでもこうやってケンカして、泣いて、でもバカみたいにつまんないことで笑い合って。
そんな日々がずっと続いていくものだと思っていた。
でも、それは結局、一週間前のあの日、全て崩れていったんだけど。
.
944人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もえぎ | 作成日時:2021年9月15日 22時