春鉛 (ページ47)

今日:14 hit、昨日:42 hit、合計:258,838 hit

47:全治2日ページ47

そんな生活を繰り返して2週間が経とうとしていたときだった。

仕事終わりにスマホを見ると1件の通知。
久しぶりに見るその名前に一瞬息が止まりそうになった。

折り返ししようかどうか悩んだ末、着信履歴に残ったその名前をタップする。

何回かのコールの後で、聞こえた声。

『もしもし？急に連絡してごめん』

電話の相手は高地くんだった。
高地くんと話をするのはいつぶりだろう。
もう随分と会ってないし、なんだったら電話で話すのなんて初めてかもしれない。

「どうしたの？急に」

急に電話なんか来るから何かあったのかと思った、なんて言ったらすごい勢いで笑われた。

『なんかあったわけじゃないよ。期待外れでごめん』

「いや、別に期待というわけじゃ。どっちかっていうとなにか悪い知らせかなーって思ったんだけど」

『お前なぁ…まぁでもそっか、それもそうだよな』

高地くんはそう言って、電話の向こうで1人何やらうんうん頷いて納得してるし。

『いやさ、この前ジェシーと会ったときにAどうしてんのかなーって話になってさ』

「え、それってなんか悪い話？」

『ちげぇわ』

悪い話ならわざわざ連絡しねぇだろ、って高地くんが笑う。
まぁたしかにそれもそうか。

『久しぶりに会えないかな、って思ったんだけど、どうよ？』

「別にいいけど」

『ジェシーもさ、Aに会いたがってるし』

「え、ジェスが？！じゃあ絶対会う！超会う！」

『お前、俺とのテンションの差すげぇな？！』

「高地は別にどうでもいい」

『おい！！！』

うそ、ごめん、って笑うと高地くんは「知ってる」だなんて少し拗ねたように笑う。

『急なんだけど、明日とか空いてる？』

「急すぎない？…まぁ空いてるけど」

『だろうな』

「だろうな、はひどい。傷ついた。全治2日」

『浅い傷だな』

高地くんが鼻で笑う。
ほんと、あぁ言えばこう言う男だな高地優吾。

『じゃあ明日な。善は急げって言うし』

「善なの？これ」

『まぁ細かいことは気にすんなよ』

じゃあ時間とか場所とかはまたメッセージ送るわ、って高地くんはそう言って電話を切った。

高地くんってこういうなんかよくわかんないけど大雑把なところあるよなぁ。

でもそれが心地よかったりもするのだけど。

終話を知らせるスマホの画面がゆっくりと明かりを消すのを見ながら、私は小さく息を吐いた。

.