87-会いに来てよ ページ42
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五条悟
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「五条、アンタ大丈夫なの?」
「何が」
「Aさんのこと」
2人だけの教室で硝子が聞いてくる。硝子や傑にはAが亡くなったこと、春に余命宣告を受けていたことを話した。1番付き合いの短い硝子ですらAが亡くなったと知ってすぐに一服しに行って帰ってきた時には目が赤くなっていた。
きっと想い人を失くしても普通の顔で葬儀から帰ってきたり、任務や授業に参加したりする俺を見て、流石に心配してくれたのだろう。
背もたれに寄りかかる。ギシッと背板が軋む。
「まぁ、人は生きればいつかは死ぬもんだし」
「本気で言ってる?」
「って思うようにしてる」
「…」
「正直、分からん。悲しいことには悲しいけど、普通の生活は送れるし。やっぱ俺薄情なのかも」
「五条がクズで薄情なのは周知の事実だろ」
「ちげぇわ」
「で、誕プレはもう見たの?」
「……いや、見てない」
まだ、Aからの誕プレは見れないままだ。部屋の机に置いてある。なんとなく見れなかった。
硝子は「……なるほど」と片眉を上げる。
「五条は、自分が思ってるよりは薄情じゃないのかもね」
「は?」
「ちゃんと見てあげなよ、誕プレ。Aさんが選んでくれたんでしょ?」
硝子の言葉に背中を押されて、その夜に誕プレを開封する決心をした。
中に入っていたのは深い青色のマフラーだった。俺の誕生日は冬だし、前に「悟って見た目通りちょっと体温低いよねー」と言っていたから、防寒具を選んでくれたのかな。この色は俺の目からイメージしたのだろうか。尋ねたいのに、答えを知っている相手はいない。まあいいや、と両手に持ったマフラーを見て頬を緩める。ボロボロになるまで使ってやるよ。
紙袋の中には小さなメッセージカードも入っていた。白い無地の厚紙に載っていたのは。
いつもありがとう。
私のことは忘れてください。
忘れて、悟の好きに生きてください。
でも、もし忘れてくれなかったら
その時は
100年後くらいに会いに来てよ。
私のお願い聞いてくれなかった罰として
離れていた時間の分、抱き着くから。
カードを持つ手が小刻みに震える。愛しいメッセージを何度も読み返したいのに、視界がぼやけてぼやけて、無理だった。カードの上に雫が溢れて、滲む。彼女らしい言葉に思わず笑う。
「……全然、罰じゃねーじゃん……!」
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紅奈虹夢@虹茶(プロフ) - 大学生っっっっっっっ!今度は逆のナンパだ、、、、よっ!良い!!!!!! (4月11日 15時) (レス) @page50 id: 763d4d21f9 (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - 面白かったです! (4月11日 13時) (レス) @page50 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - これからもずっと応援してます! (4月8日 1時) (レス) id: 06c640ba36 (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - だいすきです、、、、心の中で夢主ちゃんに喋りかけててほんとに大切な存在だったのがわかって泣きました、、、完結おめでとうございます!そしてすばらしい作品を創ってくださりありがとうございます!はむスターさんの書く作品全部大好きです! (4月8日 1時) (レス) @page49 id: 06c640ba36 (このIDを非表示/違反報告)
紅奈虹夢@虹茶(プロフ) - ......じんわりくる! (4月7日 21時) (レス) @page49 id: 763d4d21f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はむスター | 作成日時:2023年9月10日 20時