84-願掛け ページ35
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ほぼ同時に火をつけて、始まる小さな勝負。
風は緩やかに通り抜けていくので、真剣勝負ができる。
「線香花火って意外と耐久力あるよな」
「ね、静かに消えていく感じが結構好き。なんかまさに締めって感じがするよね」
「わかる」
花火から視線を逸らさないまま、何気ない会話を楽しむ。普段はサッカーだったり学校だったり忙しい日々を過ごしているから、玲王と穏やかな時間を過ごすのはひどく久し振りな気がした。
やっぱりこういう時間もいいな、と頬が緩む。
玲王は幼馴染でお互いのこともよく分かってるし、一緒にいる時間は落ち着くし。
このまま玲王といれたら、幸せになれるんだろうな。
「……あ、」
私の手からポトッと呆気なく火の玉が落ちる。勝負は静かに終焉を迎えた。まだ淡い火の光を浴びている玲王を見る。
「俺の勝ち」
そう言って花火片手に子供みたいに目を細めて笑う玲王は、私の1番好きな表情をしていて。凪くんがいなくても、サッカー関係なくても、その表情を見せてくれるんだって胸が甘く締め付けられた。
蘇る初恋の感覚に、奥歯を噛み締める。
「……負けちゃった」
「あ、俺も落ちた。残念」
使い終えた花火をバケツの中に放り込む。水に触れてジュッと煙の音が鳴る。
「そろそろ帰る？」
花火が終わったので、尋ねてみる。
玲王はこっちに背を向けて「んー」と人差し指で頬をかく。
少ししてから意を決したように振り向いた。どこか緊張した面持ちに、熱が伝染してくる。
「俺さ、さっきの線香花火に願掛けしてたんだ」
「願掛け？」
「そう。俺が負けたらこの気持ちはこのまま封印する、でももし勝ったら……」
暗がりでも読み取れる、紅い顔と耳。
「この気持ちを全部ぶつけてみようって」
欲と不安が混ざり合ったアンバランスな瞳に、思考の全てを奪われる。ただただ、吸い込まれる。彼の熱烈な視線に。
「2回も振ったくせに今更何言ってんだよって感じかもしれないけど、聞いて欲しい」
「…」
「俺、Aの特別は俺だけでありたいって思うし、正直凪とAがいちゃいちゃしてるの見て死ぬほど嫉妬してた。もうこの気持ちを無視することはできねぇ」
凪くん家で鉢合わせたあの日のように、ぐらりと揺れる心。
「______好きなんだ、Aが」
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はむスター(プロフ) - 夜夏さん» 凛くんの強者感が滲み出てますね😂 (2023年2月9日 17時) (
レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
夜夏 - 凛ちゃんの『勝った』が、めっっっちゃ好きです…！ (2023年2月8日 22時) (レス) @page46 id: 8f15f4a9c1 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - みはさん» ありがとうございます！夢主と同じ気持ちでお読みいただければと思います💪 (2023年2月7日 10時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
みは - ここからどうなるのかドキドキです😭🫶🏻 (2023年2月6日 21時) (レス) id: 48943adb31 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 咲菜さん» 守るためとはいえ嘘をついて自ら離れていく選択は辛いものがありますね😢長い間お読みくださってるんですね、ありがとうございます！☺️これからもワクワクしながら読んでいただけるよう頑張ります！💪 (2023年2月6日 16時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむスター
| 作成日時：2023年1月20日 17時
