81-応援してくれるくらい ページ32
.
凪誠士郎視点
.
真凜の目が徐々に潤んでいく。
「真凜？」
「ん、ごめんっ」
「……なんかあった？」
「……凪、」
「うん」
真凜はたこ焼きを抱えていて両手が塞がっているので、二の腕辺りで雑に涙を拭った。微かに赤くなっている目で俺を見上げた。震えた声で言う。
「A、多分戻ってこないよ」
「え」
「ラインの返信ないし、電話も出ない。きっと、わざと2人きりにされたんだよ」
真凜の言葉は刃物のように鋭く胸に突き刺さる。
「____Aは君の恋を、私が好きだっていう嘘の想いを応援してる」
それは絶対に辿り着いてはいけない未来だった。真凜が好きだという嘘を吐いた時に、1番恐れていた事態だった。頭が真っ白になる。
祭りの賑わいなんて、もはや何も耳に入らない。
Aを振り向かせることはできなかった。この事実を突きつけられて、今まで感じたことのない喪失感に襲われる。
夏祭り行こって誘ったら想像以上に嬉しそうに「行きたい！」と返事してくれたから、ほんの少しだけ期待してしまったのに。
「……俺、どこかで間違ったのかな」
「凪……」
絞り出した声は情けなく震えてしまった。
ぼやける視界。
こんな事になるなら、好きだと伝えてしまっていればよかったのか。離れていってしまうのを覚悟で、気持ちをぶつけていれば。
どっちつかずで側にいる幸せを選んでしまったから、バチがあたったのかな。
「Aはずっとレオが好きなままだ」
「そんなこと」
「そんなことあるから、こーなってんだろ」
「……ごめん」
「違う、ごめん。八つ当たりした」
「ううん、平気」
あんなに側にいたのに、心を交わせた気がしたのに、
Aは俺のことなんて一切眼中になかった。
こうして俺の恋を応援してくれるくらいには
俺のことを好きじゃない。何とも思っていない。
目に浮かんだ涙の膜がうざったくて、手の甲で雑に拭う。
「Aのこと好きなのやめる……？」
尋ねられ、わたあめを持つ手が強張る。
「やめたい」
心からの本音だった。
わたあめなんか投げ捨てて、何もかも忘れて帰ってしまいたかった。そんでシャワー浴びて汗と一緒に死んだ恋心も洗い流して。
……でも。
「でも、やめれない」
結局、わたあめを捨てることはできない。思い描いていた笑顔が手に入らなくても。
ずっと、Aが好きなんだ。苦しいけど。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1330人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ブルーロック」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はむスター(プロフ) - 夜夏さん» 凛くんの強者感が滲み出てますね😂 (2023年2月9日 17時) (
レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
夜夏 - 凛ちゃんの『勝った』が、めっっっちゃ好きです…！ (2023年2月8日 22時) (レス) @page46 id: 8f15f4a9c1 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - みはさん» ありがとうございます！夢主と同じ気持ちでお読みいただければと思います💪 (2023年2月7日 10時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
みは - ここからどうなるのかドキドキです😭🫶🏻 (2023年2月6日 21時) (レス) id: 48943adb31 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 咲菜さん» 守るためとはいえ嘘をついて自ら離れていく選択は辛いものがありますね😢長い間お読みくださってるんですね、ありがとうございます！☺️これからもワクワクしながら読んでいただけるよう頑張ります！💪 (2023年2月6日 16時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はむスター
| 作成日時：2023年1月20日 17時
