76-面倒くさい ページ27
.
バイト終わりにそのまま待ち合わせに向かうことは事前に話していたので、わざわざ来てくれたらしい。面倒くさがり屋な凪くんらしくない行動だ。
彼氏でいいんだ。
他校の凛ちゃんにも、彼氏って言ってくれるんだ。
凪くんがそう言ってくれた事実に少しだけ喜んでしまっている自分がいた。
凪くんが続けて言う。
「兄ちゃんごめんね、俺達これからデートだから」
凛ちゃんは不機嫌そうにフイッと顔を逸らすと、そのまま何も言わずに出口に向かってしまった。
「あ、またね凛ちゃん！」呼びかけた背中は最後まで振り返らないままだった。
時刻はもう17時を過ぎている。退勤の準備をする為に凪くんに断りを入れ、タイムカードを切ってバックヤードに向かった。
＊
＊
＊
着替え終わって店長に挨拶し、店の外で待っててくれていた凪くんの元に到着する。
「ごめんね、お待たせしました」
「んーん、俺が勝手に来ただけだし。バイトおつかれ〜」
「ありがとう」
「で？」
「ん？」
「さっきのナンパ男、誰」
「ナンパ男って……」
結構な言い草に思わず苦笑する。
凛ちゃんって、ナンパから1番かけ離れた存在だと思うんだけど。絶対にナンパとかしなさそう。
そんなことを考えながら「凛ちゃんはそんなんじゃないよ」と笑って否定する。
「ただの幼馴染」
「ふーん」
「ライバルはレオだけじゃないってわけね」と何やら小声で呟いている凪くん。
どういうことかと首を傾げていれば、「まぁいいや。行こ」と手を差し出される。その手を掴める幸せは十分すぎるほど知っている。……でも。
中々手を掴まない私を不審に思って名前を呼ぶ声が聞こえた。
「……今、私達が手を繋ぐ意味ってあるのかな」
「え？」
「だってほら、学校の人達に見せつけてカモフラージュする必要はないし……」
自分でも面倒くさい自覚はあった。意味なんて、そんなのあるわけないのに。でも、もしかしたら凪くんなら____と淡い期待を抱いてしまった。
優しい彼なら、私が求めている答えをくれるかもしれない。それは、一種の賭けだった。
けれど。
凪くんは困ったように頬をかく。
「意味。意味ね……。そんなの必要？」
「…」
「考えるの面倒くさいしもういいや」
「あ……」
手を引っ込めて、先に歩き出す凪くん。
なんだか隣に並ぶ資格はないように思えて、斜め後ろを置いて行かれないように歩いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1330人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ブルーロック」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はむスター(プロフ) - 夜夏さん» 凛くんの強者感が滲み出てますね😂 (2023年2月9日 17時) (
レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
夜夏 - 凛ちゃんの『勝った』が、めっっっちゃ好きです…！ (2023年2月8日 22時) (レス) @page46 id: 8f15f4a9c1 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - みはさん» ありがとうございます！夢主と同じ気持ちでお読みいただければと思います💪 (2023年2月7日 10時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
みは - ここからどうなるのかドキドキです😭🫶🏻 (2023年2月6日 21時) (レス) id: 48943adb31 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 咲菜さん» 守るためとはいえ嘘をついて自ら離れていく選択は辛いものがありますね😢長い間お読みくださってるんですね、ありがとうございます！☺️これからもワクワクしながら読んでいただけるよう頑張ります！💪 (2023年2月6日 16時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はむスター
| 作成日時：2023年1月20日 17時
