07-奇跡みたいなこと ページ7
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特別な言葉なんていらなかった。
ただ、君が好きだって伝えたかった。
いなくなってしまった君には伝えられなかったから。
凪くんを見上げて涙ながらに口にした「だいすき」は彼の目元をふわりと赤く染めた。そして「……なにそれ、ずるい」と背中に回す手に力を込めてくれた。
懐かしい匂いが鼻腔をくすぐる。
「俺も好きだよ」
「……うんっ」
上から降ってきた返事に、どうしようもなく胸を締め付けられた。
ずっとずっと、欲しかった声。
もう二度と手に入らないと思っていたもの。
私が好きって言ったら、凪くんも好きって返してくれた。これって当たり前なんかじゃなくて、本当に奇跡みたいなことだったんだ。
夢でもいい、幻でもいい、私の頭がおかしくなっているだけだとしても構わない。
今だけは目の前の幸せに縋りついていたかった。
凪くんは私が泣いている間、そっと抱き締めてくれたり、頭を撫でてくれたり、目尻の涙を人差し指で拭ってくれたりした。少しおろおろしていたのが可愛かった。
それで「Aでも泣くんだね」とか言ってきた。確かに、凪くんの前では泣いたことなかったかもしれないけど。
……君がいなくなってから、沢山泣いたよ、馬鹿。
一生分の涙を使い果たしたよ。
ようやく泣き止んでからなんだか気恥ずかしくなって「……お騒がせしました」と軽く頭を下げた。
「いーえ、たまには甘えん坊のAもいいなって思ったし」
「甘えてたわけじゃないし……」
「でも、よかった」
「え?」
人が散々泣いているのを見てよかったってなんだ?とジト目を向ければ、彼は少し寂しげに眉を下げた。
「……最近、Aのこと怒らせてばかりだったから」
その瞬間、凪くんから誕生日に貰ったメッセージカードの文章が頭を過ぎる。あんなことを書かせてしまった自分の愚かさに血の気が引く。
「だから、好きって言ってくれて嬉しかった」
ありがとう、とストレートに気持ちを表現してくれた彼の腕を掴む。
「A……?」
「ちゃんと好きだから!凪くんが、大好き。だから、その……とにかく好きってこと!」
頭の中で文が整わないまま喋り出してしまったので、語彙が小学1年生が書く作文みたいになってしまった。
凪くんは必死な私の様子にポカンとしていたが、すぐに表情を柔らかくする。
「今日はいっぱい“好き”を貰えて嬉しい」
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はむスター(プロフ) - 桜もちさん» 私もお気に入りの作品なのでそのようなコメントをいただけて嬉しいです😭☺️ありがとうございます頑張ります! (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - +...?葵*一等星?....+さん» いつもお読みくださりありがとうございます!☺︎素敵なコメントしていただけて嬉しいです😭 (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - るかさん» ありがとうございます! (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
桜もち - 大号泣でした😭😭😭最高すぎる作品をありがとうございます🥰更新楽しみにしてます! (2023年4月6日 0時) (レス) @page25 id: f3db4b5563 (このIDを非表示/違反報告)
+...?葵*一等星?....+(プロフ) - いつも読ませて頂いています!この作品凄く好きで泣いてしまいました^^;応援してます! (2023年4月4日 19時) (レス) @page25 id: b5a485c64e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はむスター | 作成日時:2023年1月11日 23時