06-再会 ページ6
.
凪くんの何度言っても分かってくれないところが嫌だった。
服や靴下は脱ぎっぱなしにするし、冷蔵庫にはゼリーしか入れてないし、授業中はずっと寝てるし、授業中たまに起きてると思えば隠密パンしてるかゲームしてるし。
何度注意しても辞めてくれないから、そのうち注意するのも諦めた。
そのうち別れたいと思うようになって。
彼がいなくなってから、私の日常は色を失った。
服や靴下が散らかっている彼の部屋はもうないし、ゼリーしか入っていない冷蔵庫だって存在しない。授業中に教室を見渡したって寝ている彼もパンを食べているのが見つかって先生に怒られる彼もいない。
日常は驚くほどいつも通り進んでいく。凪くんだけを取り残して。
彼の部屋で散らかっている衣類を見て「もう、凪くん！きちんと片付けて」って言えるのがどんなに幸せなことだったかって。
そのままの凪くんでよかったんだ。私が軽く怒って、凪くんがでもめんどくさいと口答えして。そんなありふれた日々をずっとずっと続けていたかった。
それ以外は何もいらないから……。
しかし1番の願いに気づいた時には既に、君は還らぬ人となってしまっていた。
「会いたい」と告げてすぐ、電話は途切れた。夢が覚める前にせめて一目会いたいと願った私は、すっぴんパジャマのまま外に飛び出そうとしたけど、さすがにお母さんに止められた。朝のルーティンをこなした。
そしていつもより数十分早く家を出た。
マンションを飛び出してすぐのガードレールに、彼はいた。
私に気がつくと微かに表情を柔らかくして、片手を上げる。
「ちーっす」
最後に見た彼のままの姿だった。
______凪くんだ。
凪くんが目の前に、いる。
「ほんとはサボりたかったけどさぁ、Aが会いたいって言うから来ちゃったよ。褒めて？」
彼しか見えなかった。
ずっとずっと、……ずっとこんな日が来ることを待ち侘びいていた。
目が覚めたら彼がいたらいいのにと本気で願った夜が明けて、願い通り彼のいる朝が来た。
これは何？やっぱり私の願望が見せている夢？
訳がわからない。
でも、彼がいるならそんなことどうでもよかった。
気がついたら、彼の胸元に飛び込んでいた。
彼は驚きつつ、難なく受けて止めてくれた。
「どーしたの？かわいーけど」
「凪くん」
「うん」
もしもう一度だけ会えたら、伝えたかったこと。
「だいすき……っ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 772人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ブルーロック」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はむスター(プロフ) - 桜もちさん» 私もお気に入りの作品なのでそのようなコメントをいただけて嬉しいです😭☺️ありがとうございます頑張ります！ (2023年4月6日 18時) (
レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - ＋...?葵＊一等星?....＋さん» いつもお読みくださりありがとうございます！☺︎素敵なコメントしていただけて嬉しいです😭 (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - るかさん» ありがとうございます！ (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
桜もち - 大号泣でした😭😭😭最高すぎる作品をありがとうございます🥰更新楽しみにしてます！ (2023年4月6日 0時) (レス) @page25 id: f3db4b5563 (このIDを非表示/違反報告)
＋...?葵＊一等星?....＋(プロフ) - いつも読ませて頂いています！この作品凄く好きで泣いてしまいました^^;応援してます！ (2023年4月4日 19時) (レス) @page25 id: b5a485c64e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はむスター
| 作成日時：2023年1月11日 23時
