01-君のいない卒業式 ページ1
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この制服に袖を通す機会はもう無いだろうなと思いつつ、名残惜しさなんて一切感じずに胸に花のついたブレザーをベットの上に脱ぎ捨てた。そして自らもベットへとダイブする。
今日は高校の卒業式だった。友達や後輩は多くの人が泣いていた。訪れた旅立ちの日に、寂しさを感じていたらしい。
でも、私の目から涙は一滴も落ちなかった。
____あの日に、私の感情は殺されてしまった。
以前のように悲しむことも、喜ぶことも、笑うことも、怒ることさえも、できなくなってしまった。何が起こっても感情の起伏が現れないのだ。
徐にポケットからスマホを取り出し、仰向けになって操作する。ラインを開き、もはや慣れたようにトーク一覧をスクロールする。そしてタップして彼とのトーク画面を表示する。
『Aが来てくれるまでまってるよ』
6月10日で途切れた、彼からの最期のメッセージだった。
メッセージの送り主、____凪誠士郎くんはその後亡くなってしまったのだ。
凪くんとは高校1年生の冬頃から付き合っていた。
普段は寝てたりゲームばっかりしてたりでだらしない印象だったけど、実はなんでもできちゃう天才肌で、先に私のことを好きになってくれて、優しくて時には意地悪で。そんな彼を私も好きになっていた。
最初は本当に順調だった。彼といるだけで、世界が格段と輝いて見えたし、明日がくるのが毎日楽しみだった。
それでも、高3になってからはすれ違うことが多くなった。元々、凪くんがサッカーで忙しいのは知ってたし応援していたけど、サッカーが無い日でさえ会う約束を断れる頻度が増えた。当時の私はサッカーが無い日に会えない理由が分からず、相当モヤモヤしていた。
そして稀に会える日はほぼ凪くんの家で過ごしていた。1人暮らしだし。しかし折角会えても、私はイライラしてしまっていた。
「ねぇ、服とか靴下とか脱ぎっぱなしにしないでっていつも言ってるでしょ」
「いーじゃん、俺の家なんだし」
「もう、なんでわかってくれないかなぁ」
「だってめんどくさいしー」
「……はぁ、」
サッカー以外のことは面倒くさがる彼に、徐々に苛立ちが募るようになってしまっていた。
当時は怒っていたけど、凪くんの口癖の「めんどくさい」さえ恋しい今、あの日々は何て幸せだったんだろうと涙が滲むくらい痛感している。
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はむスター(プロフ) - 桜もちさん» 私もお気に入りの作品なのでそのようなコメントをいただけて嬉しいです😭☺️ありがとうございます頑張ります! (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - +...?葵*一等星?....+さん» いつもお読みくださりありがとうございます!☺︎素敵なコメントしていただけて嬉しいです😭 (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - るかさん» ありがとうございます! (2023年4月6日 18時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
桜もち - 大号泣でした😭😭😭最高すぎる作品をありがとうございます🥰更新楽しみにしてます! (2023年4月6日 0時) (レス) @page25 id: f3db4b5563 (このIDを非表示/違反報告)
+...?葵*一等星?....+(プロフ) - いつも読ませて頂いています!この作品凄く好きで泣いてしまいました^^;応援してます! (2023年4月4日 19時) (レス) @page25 id: b5a485c64e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はむスター | 作成日時:2023年1月11日 23時