16-ただの幼馴染 ページ16
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「じゃ、私ちょっとお手洗い行ってくるから、先行ってて」
「……ああ」
最後まで背を向けたままだった玲王にそう言い残し、近くのお手洗いまで走った。
扉を開けると、同じクラスの友人の真凜が鏡の前で前髪を整えているところで。心を許している友人を見た瞬間、涙がまた溢れて止まらなかった。
「え、ちょ、A?!どーしたの!」真凜が慌ててこっちに駆け寄ってきて優しく背中をさすってくれた。私は泣きながら事情を話す。
「……振られたぁ〜」
「え、誰に?」
「玲王に振られ、ちゃった……」
「A、玲王くんのこと好きだったの?!うそ、全然気づかなかった。凪くんは!?」
「……ちょっと色々事情があるの……」
「…」
「よしよし、頑張ったねA。きちんと真正面から告白したAはかっこいいぞ」私の言葉足らずな説明にもきちんと理解を示し、頭を思い切り撫でてくれた真凜のおかげで、思う存分泣き切ることができた。
恋なんて所詮自己満足だ。
でも。
“頑張ったね”
自分じゃない誰かにそう言ってもらえただけで、報われなかった初恋が、少し報われたような気がした。
*
*
*
すぐに傷は癒えない。気持ちだってすんなりと切り替えることはできない。ただ、努力はできる。
「あれ?マネージャー、今日ギリギリじゃん。珍しいね」
「へへ、ちょっと掃除が長引いちゃって」
速攻で着替えてグラウンドに向かえば、もうサッカー部の練習が始まろうとしているところだった。
話しかけてきた部員がニヤニヤしながら言う。
「で?付き合って早々、凪ん家に泊まったんだって?結構噂になってるよ」
「!?え、」
「やるじゃん、凪の奴」
「〜〜何も!なかったから!!」
ああもう、今日は大声を張り上げてばっかりだ。からかう表情を浮かべながら「どーだか」と焚き付けてくる部員を「さっさとストレッチ始めなさい」と手でしっしっとしながらあしらう。
そうか、今の私は玲王に振られて傷心中だけど、表向きは凪くんの彼女なんだ。……なんか、心が疲れるな。
「A」
「あ、玲王。今日も部活がんばろーね」
「……おー」
何か言いたげな玲王は、しかし口を閉じてしまった。……いつも通り、できただろうか。こうして玲王はただの幼馴染になっていくのかな。
「凪くんもゲームしてないでほら、ストレッチ始めなきゃ」
「今いいとこだから」
「もう、」
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はむスター(プロフ) - 茶々さん» 初コメありがとうございます!ブーゲンビリアの花言葉、気づいてくださった方がいて嬉しいです😭 (2023年2月10日 17時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
茶々(プロフ) - 初コメ失礼します!ブーゲンビリアの花言葉でもうしんどいです、、。好みど直球な作品で一気読みでした! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 2bcc5ab034 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 莉紅-リク-さん» お待たせいたしました!続編でもお会いできること楽しみにしています!☺️ (2023年1月20日 17時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - おりかさん» ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします☺︎ (2023年1月20日 17時) (レス) id: 311247fabe (このIDを非表示/違反報告)
莉紅-リク-(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!続編待ってます!! (2023年1月20日 8時) (レス) @page50 id: 24f0804e56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はむスター | 作成日時:2022年12月28日 17時