13-嫌や ページ14
.
吐き捨てて、今度こそ直哉の部屋を出た。痛むお腹を片手でさすりながら、荷物を預けた部屋に戻る。一時の客人を迎えるだけの、2〜3畳の狭い空間。
今日はこれで帰る。どうせ私を呼び出したのは直哉だったのだからいいだろう。
もう禪院家には来ない。
______直哉とも関わらない。
私が友達でいたいと思ったのは隣に並んで気安く喋れる直哉で、暴力で物を言わせるような男尊女卑のクズなんかじゃないから。
鞄を持って入り口を振り向いたその時。
勢いよく襖が開いた。開いた襖の奥にいたのは直哉だった。無表情で腕を組む姿に気まずさを覚える。……いや、大嫌いと吐き捨てた相手に秒で再会するの流石に気まずいんですが。何で追いかけてきたのか。
直哉は後ろ手で襖を閉めると「帰るん?」とゆっくりこっちに近寄ってくる。反射的に私は1歩、また1歩と下がるが、狭い部屋ではすぐに背に壁がついてしまう。逃げ場を失った私は、鞄を両手で抱えて正面にいる直哉を見上げた。
「帰るよ。用は済んだでしょ?」
「済んでへん」
「何。まだ何かあるの?でもこれ以上ここにはいたくないから」
「来月も来るって約束するなら帰したってもええよ」
「来ないよ。もう直哉とは関わらない。一緒にいたくない」
「……Aちゃん、何様のつもり?今謝ったらギリ許したるで」
「謝らない。だから直哉も私に関わってこないで」
直哉は拗ねたように片眉を下げると、私の訴えを拒絶する。
「……嫌や」
「え?」
「何で君に指図されなあかんの?女のくせに俺を侮辱してるん?…… 離れるんやったらころすで」
温度のカケラも無い声で言われて背筋が震えた。けど、命の危機に直面して思い出した。私には最強の切り札があると。
「私を殺したら五条家との仲もっと悪くなっちゃうかもよ?」
「は?何でここで五条家が出てくるん?」
「私、五条先輩と付き合ってるから。五条悟を敵に回してもいいの?」
これは脅しだ。五条先輩の名前を借りた脅し。
直哉は傷ついたように眉を中央に寄せると、やや俯いて着物の心臓辺りをギュッと握った。
「……むかつく。クソが。Aちゃんやって所詮女やのに、なんでこないに俺の心を振り回してくるん?ほんまに鬱陶しいわ」
弱々しい嘆きに目を丸くする。
私の言葉に彼が腹を立てることはあっても、傷つくなんて思わなかったから。
「なぁ、Aちゃん。っ俺じゃあかんの……?」
.
258人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はむスター(プロフ) - さえさん» クズ男の自信のない告白いいですよね!!← お読みくださりありがとうございます☺︎ (1月31日 23時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - ......好きなんやが狂うほど好きです!!!!!! (1月26日 20時) (レス) @page17 id: 06c640ba36 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 雪菜さん» いつもありがとうございます!☺️うちの夢主は容赦ない時はほんとに容赦ないですからね…!笑 (1月26日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - 傷ついた顔をした直哉にも容赦ない夢主が大好きです…🤦♀️💞 (1月24日 16時) (レス) @page15 id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - xs.さん» ありがとうございます嬉しいです!☺︎ (1月23日 23時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はむスター | 作成日時:2024年1月13日 17時