11-裏切られた友情 ページ12
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この男はどこまで私の友情を裏切れば気が済むのだろう。
友達だと思っていた友情は裏切られ、
本家の次期当主と分家の術師という上下関係を仕方なく受け入れたのに、
今度は所有物ときた。
「私、モノじゃないよ」とありきたりな反論をすれば、「Aちゃんは俺のもんやろ」と何も響いてない様子で返された。……何?モノって。直哉のモノになりたい、なんて言ったことないけど。勝手に人をモノ扱いしないでよ。
俯き気味で不満を零す。
「……違うよ、私は。直哉のモノじゃない」
「あ?」
「私は、直哉と______」
ただ、友達でいられたらそれだけでよかったのに。
年に4回だけ会う友達。大した話はしないけど、ある意味気を遣わないで隣にいられた。そうして離れている間は、互いに自分の住む世界に没頭している。
こういう友達でいられたらそれ以上は望まなかった。
直哉はガンッとテーブルに足を振り落とす。大きな音が突然鳴り、驚きで肩が跳ねる。
「Aちゃんが俺のモノとちがうなら誰のものなんや」
「……別に、誰かのモノってわけじゃないよ」
「なら俺のもんってことやろ」
「違う」
「……Aちゃん、ほんまにつまらん女になったな。俺がなんか言うても『別に』やら『違う』ばっかりや。おもんな。なぁ、なんで前みたいに笑わんの」
「笑えるわけないでしょ。来たくもないこの家にいて」
息がしづらい。吸う空気が重たくて、息を吐こうとすると喉に突っかかる。
……帰りたい。同期の2人や先輩達に会いたい。馬鹿みたいな話をして、能天気に笑っていたい。
顔を上げると、いつの間にか椅子から立った直哉が目の前に来ていた。
「それ、俺の前でも思うてるんか?」
「……うん」
「ほな、何で帰ってきたねん」
「お母さんを守る為に決まってるでしょ」
「俺に会いたいって思たんやないのか」
「え?思わないよそんな事」
「…」
何言ってんだコイツ、と本気で顔を顰めると、直哉は言葉に詰まって一瞬迷った表情を浮かべた後。
いつかのように、体が後ろに吹っ飛ばされた。直哉の蹴りが私のお腹に入ったのだ。ヒュッと喉から掠れた音がして、お腹の焼けるような痛みに手を添えてその場に蹲る。
痛くて、生理的な涙が頬を滑る。下唇を噛み締めながら直哉を睨みつければ、動揺した瞳と目が合った。蹴ったのお前だろうが。
「な、泣いたら許される思てんやろ。これやから女はあかんねん」
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はむスター(プロフ) - さえさん» クズ男の自信のない告白いいですよね!!← お読みくださりありがとうございます☺︎ (1月31日 23時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - ......好きなんやが狂うほど好きです!!!!!! (1月26日 20時) (レス) @page17 id: 06c640ba36 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - 雪菜さん» いつもありがとうございます!☺️うちの夢主は容赦ない時はほんとに容赦ないですからね…!笑 (1月26日 18時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
雪菜(プロフ) - 傷ついた顔をした直哉にも容赦ない夢主が大好きです…🤦♀️💞 (1月24日 16時) (レス) @page15 id: f0574d2f45 (このIDを非表示/違反報告)
はむスター(プロフ) - xs.さん» ありがとうございます嬉しいです!☺︎ (1月23日 23時) (レス) id: fadfb7919a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はむスター | 作成日時:2024年1月13日 17時