144-未来へ ページ46
.
晴れた青空に、風はなくてマフラー無しでも過ごせそうな穏やかな気候。
お見送り日和だ、と天に向かって伸びをする。
寝坊はさせずにすんで、凪くんの家の下。一時だけでも長く触れていたかったから手を繋いで玲王の迎えを待った。
そうして長い長い車が現れて玲王の「乗れよ」の声と共に扉が開く。車に乗っている間は、他愛の無い話ばかりをしていた。玲王はこれから向かう先に絶望なんて存在しないのだと、自信に満ち溢れた顔をしていた。
車が目的地に到着する。降りて、凪くんがサボテンのチョキをばぁやさんに預ける。
わくわくしている玲王の背中と、相変わらずゆるゆるな凪くんの背中を見て、ふっと頬を緩ませる。
特別な言葉なんていらないんだ、きっと。
はじまりは、あの日。
「俺、サッカーやりたいんだ。それで、日本代表になってワールドカップで優勝する」
玲王の夢でしかなかった夢に凪くんが加わって、夢がより一層手の届く存在へと変わっていく。
私も玲王の夢を支えたいと、世界一になるのを側で見守りたいと思っていたけれど。……もう、私は必要ないみたいだね。夢は夢を叶える当人達だけで追いかければいい。支えることしかできない私はいらない。
玲王の夢に乗っかるだけの私は、もう卒業だ。
私も私だけの夢を見つけて、叶えたい。
吹っ切れてしまえば、心の霧が晴れていく。
「玲王。W杯で優勝する夢を叶えるまで、ぜっったいに諦めちゃダメだよ」
「は、誰に言ってんだよ。当たり前だろ。俺は凪と世界一になってW杯で優勝する。絶対にな」
「ふは、さっすが玲王」
さすが、私の初恋。
続いて「凪くん」と呼び掛ける。
「玲王をよろしくね」
「うん」
「あと、ごめんね。1個だけ嘘ついてた」
「うそ？」
「離れても寂しくないって言ったの、嘘。本当はめちゃくちゃ寂しい」
「…」
「でも、それ以上にサッカーで輝く凪くんを見れるの楽しみにしてるから。いつか天才・凪誠士郎の名前を轟かせてね」
「いえっさー」
凪くんが腰を屈めて「行ってくる」と私の頬に唇を落とした。
「いってらっしゃい！凪くん、玲王」
2人の背中が見えなくなると、やっぱり寂しくなってしまうけれど。
進む未来にきっと、絶望なんてない。
「____私も、頑張ろう」
晴れた気分で青い空を見上げれば、不機嫌そうな灰色の雲が辺りに散らばり始めていた。
fin…?
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1639人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
飴玉(プロフ) - ほんと素敵なお話ありがとうございました😭一つ一つの表現の仕方が切なくてなんかすごく刺さるものがあった小説でした！！初めてこんなに夢小説にハマりました！続気も書いてくださるとは…めっちゃ嬉しいです。これからも活動応援してます✊🏻´‐ (2023年3月17日 23時) (
レス) @page50 id: 6166c70364 (このIDを非表示/違反報告)
かい - わー！おめでとうございます！！社会人編があるなんて！？楽しみしてます！ありがとうございます！！ (2023年3月16日 19時) (レス) @page47 id: 4d5241d02c (このIDを非表示/違反報告)
沈みゆく佐藤。(プロフ) - 下睫毛さんとの意味深なフラグ回収はありがたい。主様の作品は切なくてさっぱりしてるところ夢小説にはあまりない現実に近しいかんじがとても好きです。社会人編では下睫毛さんとの絡みに期待ですね!! (2023年3月15日 17時) (レス) @page47 id: 4118c67c05 (このIDを非表示/違反報告)
マユリ(プロフ) - 完結おめでとう&お疲れ様です♡失礼ながら最近気づいたのです…推し検索して1話読んで気に入ったらお気に入り登録するのですが、主様の作品全部登録してました(*pωq*)根っからのファンみたいですwwwこれからも応援してます♡ (2023年3月15日 1時) (レス) @page47 id: 7b9abdf20f (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 完結おめでとうございます！！毎日更新を楽しみにしていた作品が一時的に（？）終わってしまったのは悲しいですが心の支えになってました！また楽しみにしています！ (2023年3月15日 1時) (レス) @page47 id: b983e74723 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はむスター
| 作成日時：2023年2月13日 19時
