No.３ ページ4
仕方なく傘無しで帰ろうと靴箱で靴を履き替えると、昇降口に出て空を見上げた。
テンションの低い曇り空。
『晴れてよね』
なんの躊躇もなく足を雨の中に出すと濡れながらも歩いた。
途端に悔しい気持ちになって涙が出て、何が何だか分からなくなって、気付いたらうずくまってた。
天心「大丈夫？」
『っ！』
頭上から声がして、雨が体に当たらなくなった。その途端恥ずかしくなって立ち上がる。
『だ、大丈夫です、ただ物を拾ってただけなので』
天心「本当に？めっちゃ濡れてんじゃん」
涙は雨の雫と一体化して気付かれない。良かった。
天心「ていうか…なんで泣いてんの？」
『泣いてませんよ、雨じゃないんですか？』
まだ学校にいた天心選手は、傘をさしながら私を視線から外さない。
『し、失礼します』
天心「待って、傘ないのに風邪引くよ」
帰ろうとすると腕を掴まれてそう言われる。その親切に、胸がキュッとなった。
『別に風邪ひいても良いんですよ…私なんか…』
天心「は？」
頭上で聞こえたのは、聞いたこともない低い声。
『…心配する人とか、いませんから』
しばらくの沈黙の後、その場にいることが嫌になって腕を振り払い走った。
たくさんの水しぶきがスカートにかかる。ローファーは泥だらけになりハーフアップにした髪の毛は
雨でベチョベチョになった。顔は打ちつける雨の嵐と涙でぐちゃぐちゃ。
悲惨だった。でも、気にしない。
『あっ！』ﾍﾞｼｬｯ！！
足を滑らして転んでしまった。痛いし辛いし恥ずかしいし、、、。
『…いっ、たぁ…』
膝と肘を擦りむき血が滲む。ゆっくり立ち上がると仕方なく歩いて帰った。
ーーーその頃ーーー
1人ポツンと取り残された天心。
天心「……」
Aが去った後の道をじっと見つめていた。
櫻井「西園寺は…ああいう子なんです」
突然担任の櫻井先生が傘をさして近づいて来た。
天心「ああいう子っていうのは…？」
櫻井「高校１年生までは明るい子だったんですよ…友達と笑い合って、泣き合って…でも、去年の冬
ぐらいから急に1人になってて…笑わなくなったし」
天心「急に1人に…」
櫻井「はい…何より、誰にも頼らなくなったんですよね…まぁ、西園寺なりに何かあるんでしょね」
天心「キックボクシングを辞めたのと関係があったりして…」ﾎﾞｿｯ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蝶華 | 作成日時：2022年12月3日 8時
