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森田side


いよいよ2週間後にツアー開幕を控えていた。

会場で仮セットを組んでのリハーサル。


楽屋ではスタッフやメンバーが忙しなく出入りする。

スタッフ「坂本さんはどうです?」

スタッフのうちの一人が、メンバーの招待客について確認をしに来た。


坂本「母と父……2人分で」


長野「お母さん皆勤賞だね」


坂本「ほんとに。はしゃがないように言っとく」


スタッフ「あ、逢江さーん、招待の方は?」


逢江「はい! 逢江はゼロでお願いします!
で、こっちの機構なんだけど……」


Aは演出に関わっているだけあって、
楽屋に滞在する時間はごく僅かだ。


招待客について質問してきたスタッフに手短に返事をし、

ステージスタッフと打ち合わせをしながらまた楽屋を出ていった。



次のリハ開始まで少し時間がある。

一服しようと思って楽屋を出た。


向かった先の喫煙所、
そのガラス越しに
こんな会話が聞こえてきた。


スタッフ1「逢江さんって家族呼んだことあるんすかね? いっつもゼロって言いますよ」


スタッフ2「ないんじゃないですか? そもそも家族はお母さん1人だけらしいけど」


スタッフ1「へー、可哀想」


スタッフ2「親孝行とか考えないんですかね」



おい、聞こえてんぞ。

思わず立ち止まって睨むと、
ガラス越しに目が合った。


スタッフ1「おつかれーっす」

スタッフ2「行こう」


1人はあっけらかんとして挨拶をし、
もう1人は気まずそうな顔をして立ち去って言った。



あんな話、Aに聞かせてたまるか……。

Aがこの場所には来ないことを知って
そんな話をしていたのだろうか。


無神経な奴はそこかしこにいて、

そいつらの無意識的な攻撃は
まるで流れ弾のようで
こっちは防ぎようがない。


そんな理不尽な攻撃に
傷つくこともあるけど、

10代の頃からこの世界に身を置いたせいで
多少なりとも免疫はある。


腹を立てることさえ労力のムダだ。


だが、

その攻撃の対象が
自分自身のことではなく
家族のことや仲間のことになると話は別。


Aは特にそういう人だ。



メンバーのことやグループのことを悪く言われると
人が変わったようになるくらい

正義感が強くて、仲間想いのやつ。


そんなAが親孝行を考えないわけないだろ。

Aもお母さんも可哀想じゃねぇよ。




俺もAの全部を知っているわけではない。


だけど、お母さんを呼べないことに
Aなりの理由がある事は聞かなくても分かる。

足音が聞こえる→←・



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ヨ-リン(プロフ) - tataichihi0719さん» そのように言って頂き、とても嬉しいです!最後までお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年2月3日 0時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
ヨ-リン(プロフ) - わーいなんださん» 嬉しいコメントをありがとうございます。これからも楽しんで頂けるよう、頑張ります! (2021年2月3日 0時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
tataichihi0719(プロフ) - 続きが待ち遠しいです! (2021年2月3日 0時) (レス) id: d7d462c614 (このIDを非表示/違反報告)
わーいなんだ - 一作目、二作目とどちらも楽しく読ませてもらっています! (2021年2月2日 15時) (レス) id: 3110676615 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヨーリン | 作成日時:2021年1月26日 21時

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