家族のこと ページ42
2011年7月
来月からライブツアーが始まる。
必然的にメンバーと顔を合わせる機会も多かった。
「ねぇ井ノ原くん。弟さんとどんなお話する？」
「弟と？ んー、ほんとに他愛もないことだよ。
急にどうしたの？」
「実はね、今度初めて弟と会うの」
「……どういうこと？」
「数年前に母が再婚してるんだけど、お相手に息子さんがいて。歳は私より10個下で、今、大学生らしいの」
「へー！」
遡ること8年前。
再婚する話を母から聞いた時、
まず母の夫となる人と挨拶がしたいと私は言った。
彼は、母と同じくらい遠慮がちで真面目な人。
前妻は家庭に向かない人で
夜な夜な遊び、夫と息子を残して家を出てしまったという。
正直、複雑な気持ちでいっぱいだったけど
この人ならきっと母とうまくやれると直感的に思った。
この時、私は2つの提案をした。
1つ目は、“新しい家族の存在を公表しないこと”。
私は職業柄、どうしてもプライベートを赤の他人から詮索される立場にある。
時に、家族にその手が及ぶこともある。
私が公の場で言わなければ、
探し当てられることもなかろうと思った。
これが彼らの生活を守るための最善策だと考えたのだ。
2つ目は、“私の存在を、父方の親族に知らせないこと”。
これは、1つ目の提案と理由は同じ。
“親族”の中には、彼の息子―前妻との間に生まれた子―も含めることにした。
名前はシュンくん。当時小学6年生。
ただでさえ、新しいお母さんの存在を受け入れるのに時間がかかるはず。
そんな中で、
テレビに出ているアイドルという特殊な仕事をする者が身内として現れたら、余計に混乱するだろう。
周りからも好奇の目で見られるかもしれない。
どちらの提案も、
2人はしっかりと受け入れてくれた。
申し訳なさそうに頭を下げ、
「ありがとうございます」と言われたことは今も覚えている。
2つの提案に従って、
私たちはこれまでお互いの存在を感じずに生活していたのだ。
「実は、最近母が入院したの。
そのお見舞いの日に、弟と会うことになった。
来週なんだけど……何話せばいいかとか考えちゃって、もうソワソワしちゃう」
「そういうことなの……。
でも、弟とか姉とかそういうの気にせずに、普通に友達と話すように話せば大丈夫だと思うよ」
「そうする。井ノ原くんありがとう」
井ノ原くんは「いいってことよ！」と言いながら
親指を立てていた。
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ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - tataichihi0719さん» そのように言って頂き、とても嬉しいです！最後までお付き合い頂けますと幸いです。 (2021年2月3日 0時) (
レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
ﾖ-ﾘﾝ(プロフ) - わーいなんださん» 嬉しいコメントをありがとうございます。これからも楽しんで頂けるよう、頑張ります！ (2021年2月3日 0時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
tataichihi0719(プロフ) - 続きが待ち遠しいです！ (2021年2月3日 0時) (レス) id: d7d462c614 (このIDを非表示/違反報告)
わーいなんだ - 一作目、二作目とどちらも楽しく読ませてもらっています！ (2021年2月2日 15時) (レス) id: 3110676615 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾖｰﾘﾝ | 作成日時：2021年1月26日 21時
